目白からの便り

キャリア設計の手順書

みなさま

今朝の都内は澄み切った快晴で、身が縮む寒さも心地よい。

都内にこんなに静かな空間があるかと思うほど落ち着いた空気が流れるところに質素ではあるが圧倒的な存在感を示す建物があった。長い年輪を刻んだ樹木の中に囲まれている。建物の前の案内版には、乃木館と記されている。日露戦争で二百三高地攻略の指揮をとった乃木希典元帥の名にちなんでいる。実際に彼は、学習院大学の院長として、彼が歩んできた経験の全てを学生と一緒に寄宿し全人格的教育に尽力した。

今週、同じように組織人事の研究と教育に真摯な時間を積み重ねている学習院大学の守島基博先生のご厚意で、講義をする機会をいただいた。200名ほどの講座なので普段私が大学で行っているワークショップスタイルではなく講義形式でお話しした。とても礼儀正しく熱心に聞く姿勢に私の学生の頃と比較して立派だと感じた。

講義の内容は、日本の雇用構造の推移と将来の雇用環境の現実。その前提で自分自身のキャリアの設計手順について、企業人事の経験と、現在のリアルな転職の現場で日々感じていることを踏まえて伝えた。

キャリア設計のプロセスは、企業活動でいうところの事業戦略策定プロセスの手順に近い。多くのキャリア研修講座が自分探しの域で留まってしまうことに一抹の不安がある。

キャリアにおいても、需給構造からの就職先としての顧客要求仕様の明確化が求められる。そこにはキャリア上の競合分析も不可欠である。更に実際の能力蓄積には綿密に詳細計画も必要なのだ。
整理検証する項目は多々あるが、手順に沿って取り組めば必ず良質なキャリア設計図が完成する。

あとは人間力である。個人一人で持つ能力は限られる。その人の周囲に幾人の協力者がいるかという総力戦なのだ。信頼を得られる人間になるためには精神の鍛錬も必要である。

乃木希典が院長の要職にあっても学生と寄宿し、自身の生き様を通じて人の育成に取り組んだことにその意義と重みを感じる。

今日一日が良い一日となりますように、大切な方を失い、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

車中にて 竹内上人

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