キャリアの作り方

パイは焼いてから食べよう

今朝の松本は氷点下6度、冬の快晴の朝を迎えている。王ケ頭(2024m)の背後から強い日の光を浴びる。瞬く間に節分の日を迎え、暦の上では立春を迎える。少しずつだとは思うが、日の長さを感じ、日中の暖かさを感じる時間も多くなるのだと嬉しくもなる。

二つの大学の講義も今週で終わった。後期の講義はリーダーシップとEQ(こころの知能指数)をテーマに構成したものと、チームビルディングの要素を加えたものである。最終講義は、後期15回で学んだことを、自分自身で12枚程度のスライドでまとめ上げ発表する。またリーダーシップとチームビルディングの講座は、4~5名程度のグループで理想的な組織をどのように組み立てていくかをまとめる。

今期の学生の発表はとても卓越したものであった。学生なりに読み解き、考え、創造したスライドは目を見張るものだっし、発表も堂々としていた。

チームビルディングの講座の発表で事件が起こった。チーム発表のプレゼンを最終的にまとめ上げる役割の学生が、インフルエンザで出席できなくなったのだ。チーム発表の順番を最後にしたのだが、件の学生からの応答は途絶えている。本人は、メールで送ったようなのだが、うまく受け取れていない。
そこからチームの緊急対応が始まった。この日のチームメンバーは欠席した男子留学生を除き、一人の日本人の男子学生と3名の女子留学生で構成されていた。私は教室の後列で、他のチームの発表を聞きながら、スライドを失ったチームの様子を観察していた。他のクラスメートのチーム発表を聞きながらも、相互で俊敏に打ち合わせをしている。自分たちの発表の順番の少し前に彼らの顔つきに安ど感と明るさがよみがえった。

発表は、部分的に分担して手元に残っていたスライドをプロジェクターで投射しながら、足りないところをメンバーが交互に表現豊かにスライドなしで発表した。危機に直面した組織でありながら、団結心とスライドなし表現するために、個々の表現はとても熱のこもったものになっていた。

授業が終わった後、そのチームの雰囲気はとても一体感があった。危機を一緒に乗り越えたことからくる利益共同体としての仲間意識が醸成されていた。組織には、「リーダーシップ(Leadership)」だけでなく、それを相互に支える「フォロワーシップ(followership)」の良質さも不可欠である。そして、何よりチームとして何かを成し遂げる一体感、「メンバーシップ(membership」にたどり着く。その時に「私(わたくし)の利益」は薄くなり、共同の利益を享受する。

友人と食事をしながら、「パイは焼いてから食べよう」という話で盛り上がった。パイ生地をこねている時に焼けてもいないパイの取り合い合戦や、身の丈を超えた大きさのパイをこしらえようとする滑稽さを思いながら、「その話はまず焼いてから・・と」、チームとしての成果を最優先して活動するメンバーシップの大切さを再認識した。チーム一体で成し遂げたら、パイの分配も冷静になるものだ。
ちなみにこのパイとは、どのようなパイであろうか・・私のイメージは労働運動発祥の英国の伝統的なお菓子の定番のアップルパイなのだが。みなさんのイメージは。

今日の節分、後片付けに困らない程度に豆をまき、厄を払いと招福を願いたい。今日一日が良い一日となりますように、また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

松本の自宅にて 竹内上人

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