みなさま
今朝の都内は、雲に厚く覆われ、湿った空気に包まれている。ひところの耐えられないような強烈な暑さは感じられない。確実に季節は変わりつつある。
先日、都内で「留学生キャリアカフェ」を開いた*1。10名の異なる大学の留学生が集まった。2時間程度の短いセッションであるが、日本の典型的な採用面接をシミュレーションしながら自分自身の表現方法、人事担当者の採用基準について、実践的に体験できる構成にした。
大学の教室でやる雰囲気とは全く異なり、少人数でソファーが置かれたリラックスした空間で、コーヒーやチョコレートを楽しみながらキャリアを考えることはとても貴重である。セッションの冒頭、卒業後は日本で働きたいか尋ねた。半分の学生は日本の企業で働きたいと不安な目をしながらも答える。注目すべきは、『きっと私は、日本の会社の規則やルールは窮屈で耐えられないと思う』と答えた学部3年生の女子学生の言葉である。
私もそう思う。たしかに日本の会社は、なぜ、こんなにも窮屈なのかと。自分の個性を封印すれば、それなりに安楽な場所なのであるが、純粋に自らの個性を表に出しすぎると、周囲の抵抗と介入に直面する。
多様性やイノベーションを大切にしたいというメッセージはどの日本企業も高く掲げている一方で、同質性を問う。それは、均質化され高品質の商品・サービスを効率的に大量産出する環境においては有効なマネジメントのエッセンスであったと思う。
このキャリアカフェでは、日本企業や組織において具体的な人事規定や賃金規則の仕組みを理解し、日本の雇用慣行のエッセンスを考える場にしたい。ルールの探索を通じ、ルールが何を求めているか、制定された背景は何か、ルールの公平感の基準はどこにあるのかを考える機会にしたい。そして一歩踏み込んで自分たちで日本の雇用慣行の中でどのようなマネジメントに関するルールをつくるべきかを自らの思考の中で設計する段階に誘いたい。単純に現在のルールの迎合ではなく、これから日本が直面するグローバル化、産業構造の転換、労働力人口の減少、雇用流動化を踏まえ、どのように働く人が変わらなければならないかを誘発する新しいタイプのルールを学生視点で考案し、企業に逆提案できる留学生コミュニティーを醸成できればと願う。
私は、実はあまり、先の女子学生の悩みについては心配していない。なぜならイノベーションを起こそうとしてる優れた日本企業のトップは、自らの組織を窮屈なものにしたくないと心から願っており、彼女の入社を願っていることを知っているからである。窮屈でない会社を、自分たちで発掘し、創出することの後押しをしたい。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。
九段にて 竹内上人