キャリアの作り方

45年のキャリアが問いかける意味

みなさま

今朝の松本は一層、秋の気配を感じさせる心地よい冷気に包まれている。あいにく天気は悪くなる方向に向かうようだが、季節の移り変わりのシグナルは着実に身近にある。台風の接近と北方からの飛来物の情報で不安な朝でもある。

少し前にニューミュージックの世界でデビュー以来45年のキャリアを積んだ人のコンサートに久しぶりに行くことができた。彼女は年齢もすでに還暦を過ぎ63歳になっていた。
それでもその人のステージは年齢を感じさせないエネルギーと若さを観客に投げかける。身体的な若さだけではなく精神的な若さの象徴である純粋さと常に向き合って活動していることがそのステージの空気から鋭く私たちに問いかけるような感覚で、年齢を超えた特殊なオーラを放っている。キャリアが放つ合理性の限界を超えた影響力のリアルであろう。会場にいる観客もそれぞれ45年の共有した時間の積み重ねからくる一体感を持ち、それはそのまま彼女への絶対的な信頼感へとつながる。

同じ業界で同じ専門性のキャリアを17歳から還暦を超えてまで継続することの凄さがここにある。日本の伝統工芸を担っている匠と言われる職人にも同じような時間の積み重ねから放たれる独特な影響力がある。

キャリアの悩みに直面している方とお話をする時、会社を変わり、今の仕事とは全く別の領域に移り住みたいという切実な悩みに向き合う。それでも私の唯一のアドバイスは業界と専門性の2つのマトリクスのうち少なくともひとつは自分の懐から離してはいけないと引き止める。特にキャリアの後半の方にはその説得の必死さは増していく。

これからの日本の雇用システムは、総額人件費管理のやりやすさとグローバル化への組織的服従の影響が強まることにより、職能給から職務給への傾斜の圧力が強くなる。評価の基準が人から仕事に変換した時に行わなければならない「職務評価」を、日本の経営や人事の方は組織硬直化の回避と、おそらく現実的な問題として手が回らなくできなくなる危惧も持ちつつこの変化を冷静に見守り、対処していきたいと思う。
同じようなムーブメントが昭和三十年代に起こったが、経営者や人事は冷静さを取り戻した経緯がある。
私は同じ仕事でも、その人が放つ影響力の違い(全人格的影響力)は人によって圧倒的に異なるという現実をいかに人事評価の世界の中に組織の論理と折り合いをつけていくか、これからも格闘することになるだろう。

45年のキャリアを持つ彼女のコンサートから私自身へ問い掛けられたメッセージであった。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

松本にて 竹内上人

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