目白からの便り

信頼経営 約束を守る

今朝の松本は薄曇りの空が広がっている。都内と比べるとやはり肌寒い。昨夜遅く松本市内に戻ってきた時に松本城の桜は最も見ごろであると全盛の勢いでその存在を浮かび上がらせていた。

今週の学習院大学の経営総論の講義で、社会の中での企業価値について学ぶ機会があった。参考図書として学生に示してある書籍に描かれた図柄は懐かしい記憶を刺激するものであった。その中には、企業が責任を果たすべき対象としてのステークホルダーとして、「株主」、「顧客」、「取引先」、「従業員」、「地域社会」、「政府・行政」、「NPO・NGO」の7つの対象が描かれている。

今から15年ほど前、前職で人事課長をしていた当時、会長(故人)と同行して様々な講演会の現場に出向いたことがしばしばあった。当時は長野県経営者協会の会長もされていたので、経営に関する講演を依頼されることが多かったのだ。講演に先立ち資料の準備を事務方として指示を受けながら携わった。私にとって、経営を担う方の想いに直接触れる貴重な経験でもあった。

講演で使用するスライドの用意で指示された中に「信頼経営」という言葉と先に挙げたステークホルダーに企業が果たすべき役割について必ず差し込まれていた。
会長からは、企業を取り囲むように「顧客」、「従業員」、「パートナー(取引先)」、「投資家」、「社会」、の5つのステークホルダーを描くように指示された。

講演では、それぞれの利害関係者に果たすべき責任について、長い経営実践の中で実例を交えて丁寧に語られていた。講演の最後には、企業はこれらの方々との「約束を守る」ということが最も大切であることを伝えられた。

法律、ルール、契約などの経営活動の仕組みの中で定められた遵守事項だけでなく、企業が示した目標や理念で定められた事柄や規範はすべて第三者に対する約束であり、その約束を守ることが経営にとって最も大切なことであるのだと。他者や自己に対する「約束」を守りぬく思いの強さを演壇のそででスライド操作をしながら感じていた。

「約束を守る」とは、難解な経営論理ではなく、極めて簡素な言葉であるだけに脳裏の奥底に今も沈殿している。

今日一日が良い一日となりますように、困難に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

松本にて 竹内上人

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