目白からの便り

『新成人おめでとう』、頑張れ!大人

昨日、友人と長野県松本市にある松本市美術館を訪れた。ご存じの方も多いと思うが、草間彌生さんのコレクションを中心に展示してある。彼女の故郷は松本市でもある。作品自体は様々なメディアでとりあげられ馴染みもあるのだが、作品の横に掲示されたメッセージボードの言葉に心が奪われる。十代の若き日に自分自身に絶望したとの記述がある。周囲から受け入れられない孤独との壮絶な格闘もあったのかと当時の彼女の心境を想う。

1月15日は、旧暦では「小正月」にあたり元服(げんぷく)の儀式を行っていたことから、1999年までは15日が成人の日として定着していた。祝日に関する法改正で、今年は1月9日(月)だった。元服は、奈良時代頃から成人として自覚し、周囲に表す儀式であり、時代により年齢に開きがあるが、概ね12才から16才の間で行われていた。昨年から成人年齢が、20歳から18歳に引き下げられたが、遠い昔にはそれ以上に若くして、大人の仲間入りをしていた。

成人の日の朝は、毎年決まって新聞の広告記事を楽しみにしている。ご存知の方も多いかと思うが、酒造会社が出稿する広告記事である。昔は山口瞳氏、現在は伊集院静氏の寄稿による。日本経済新聞の紙面をめくっていると、私にとっては親しみのわく文体で、その「新成人おめでとう」は、今年も続いていた。今年の表題は。「水のようにまぶしい君になれ」であった。

『去年の春から大人は十八才になった。なぜ急にふたつも若くなったのか?それは信頼できる、可能性を信じていきている大人を一人でも増やしたいからだ。・・・(略)・・・さあ立ち上がろう。新しい日本人になるために、苦しくとも、ともに歩きだそう。立ちはだかる山も、挑めば必ず光が差す道は見えてくる。美しい一本の渓流が乾いた喉をうるおしてくれる。・・・(略)・・・その日まで君たち新しい大人を私たちは応援し続けるから』

我が国の18歳人口は、私が18歳だった1970年では158万人、2022年が、113万人、2040年の予測では88万人になると推計されている(総務省統計)。少なくなる次世代の若者を支援し、育成する責務は、社会であれ、学校であれ、企業であれ、私たち大人の役割でもある。

自分のことで精一杯の大人もいるであろう。でも、もし少しでも余力があれば、次の世代の為に想いを巡らし、行動したい。様々な個性と想像を超える潜在能力の可能性を肯定的に捉え、孤立させずに声をかけ、支えていく気持ちを持ちたい。新成人おめでとうのメッセージは、大人の私達に向けられた責務のメッセージでもある。

頑張れ! 大人

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2023年1月13日  竹内上人

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