目白からの便り

新たな雇用機会の模索 多様な雇用にチャレンジする

10月も第三週に入り、大学の後期課程も生徒が履修科目を確定し、彼らの表情も落ち着きをとりもどしつつある。後期は日本でのキャリア形成を念頭に置いたキャリア開発やチームビルディングを題材として授業を進めていく。主題のひとつとして、EQ(Emotional Intelligence)という感情能力の開発を取り上げる。人間の持つ感情を、可変的、開発可能な能力として捉え、自分の感情を知り、それをうまく使いこなしていく、さらにその感情を他の人たちの為に積極的に活用していくことの価値と自己のキャリアのどのように結び付けていくかを学ぶ。

グループアクティビティを通じたリーダーシップスタイルのレビューチェックも多面的に行いながら企業内の人事としての経験と、転職市場でリアル雇用の現場で学んだ経験をフル活用していきたい。また、組織における役割を正しく演じるために、「Leadership」 と「Followership」の2つの主機能と「Manager(統治・管理者)」 ,「Organizer(調整者)」, 「Co-worker(仲間・協業者)」, 「Missionary(伝道・教育者)」 という自己に内在する4つの役割要素を副機能として、組み合わせて自己を読み解きながら鍛錬していく。後期課程から特に日本での就労環境の理解を深め、直面する就活に対する実践的な要素に重点を置く。留学生個々のキャリアプランを策定し、大学卒業後の日本での就労を実現するための実践的な個別指導プログラムである。高い就労意欲を持った留学生を日本の企業や組織が積極的に活用していくための動きにつなげていきたい。

人事としての深い反省として、留学生が日本の組織慣行を学ぶことも必要だが、日本の企業も自ら多様な人材を招き入れる自己変革も必要であることを痛感する。限界集落(1991大野晃)という概念がある。人口の50%以上が65歳以上の高齢者になって冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落を指す。日本は、少子高齢化の人口構成の深まりが避けられない。就労人口は、年を重ねるごとに高齢化し、若年労働力は、明らかに減少しその速度は速い。そして、絶対数の減少以上に高齢化比率のもたらす影響は大きい。1989年に15歳から64歳の生産労働人口は、1990年が8,590万人だったのが、2015年には7,682万に10%程度減少し、将来予測では2060年には、4,418万人まで減少し、1990年の約半分にまで急落する水準に至る。(内閣府 2014)

特に大手企業に大量の学卒新卒者を奪われてしまう中小中堅企業ではその状況は顕著である。このままの状態が続けば、企業内に働く手がいなくなり、体力的に衰えが避けられない高齢者比率が高まるのは明らかである。企業人事はなかなか重い腰を上げないが、絶対数が減少した日本人の労働力を奪い合うのではなく、外国籍を含めた多様な人材を積極的に組織に招き入れる準備をできるだけ早急に取り組む必要がある。

地域社会と同様に企業も定年延長や高齢者の就労促進の工夫だけでは企業の体力を劣化させる。多様な価値観と充ち溢れるエネルギー豊富な若い人材を受け入れる為に企業自身が、意識の面だけでなく、人事制度も含めた仕組みの変容しなければならないことは多い。この「問い」は、企業だけに課せられた「問い」ではないかもしれない。学校や地域社会など、人によって構成される組織はすべからく同じ「問い」と向き合うことになる。悲観的にならず、多様な雇用モデルにチャレンジしてみよう。その為の準備の時間はそう長くはない。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2022年10月21日  竹内上人

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