キャリアの作り方

人材育成 ネットワーク時代における吸人力

早朝の都内は、グレーの薄い雲と淡い青空を交互に映し出す。ビルに反射する光の強さから今日も日中の暑さを予感する。梅雨も登壇するタイミングを逸してしまうのであろう。

今週、所属するJSHRMという人材マネジメントを学ぶ組織の分科会で日本総研の山田久先生の書籍を取り上げ、これからの賃金のあり方や雇用形態の方向性について、研究者や実務家が集まって討議を行う機会を得た。とても活発で意義ある機会となった。コロナ禍において急速に進んだデジタル化の流れの中でオンラインによるこうした学習の場は数年前には想像もつかなかった。同じ空間で人の息遣いを感じながら意見を交わす場は貴重でもある一方で、地理的に離れた人たちがネットワークにアクセスするだけで集まることができる機会の出現もこの上ない賜物だと思う。

就労の場でも、学習の場でも2年前と比較すると、オンラインでのコミュニケーションの機会が日常化している。私自身が担当している大学の講座も主にオンラインで行われ、日本に入国できない留学生もPCのモニターを通じ講義に出席している。個別に尋ねない限り、彼らがどこから出席しているのか気付かない。ただ唯一の高い弊害は時差なのだと感じる。特に9時から始まる1限目の時間帯は、欧州の生徒にとっては深夜となり眠たい中での出席に気遣うこととなる。

学ぶ場と同様に、雇用の現場でもさまざまな変化が起こってきた。タイミング的にコロナ禍とITの進化が重なるのと同時に、日本においては少子化という人口構造の変化に向き合う課題を問いかける。日本はモノづくりの現場を中心とし、長期的、固有的な関係基盤に支えられた価値のすり合わせを通じて、高い生産性と品質水準を武器に国際競争力において優位性を保ってきた。今後は現場だけではなく組織全体として、人間味を大切にしつつも優れた創造性と生産性、品質を創出する人事の仕組みに拡張しなければならないのであろう。人事の研究者や実務家の中では答えが出し切れていない領域になる。

組織の垣根が希薄化していく中、企業内だけで知的資産を活用する段階から企業の外側を含め個々人が持つ経験や見識、ノウハウを含めた知的資産を共有し、活用できる組織文化と働き方に変容させていくための人材マネジメントの仕組みが必要になってくるのではと山田久先生の書籍からの提言に刺激され思いを巡らせる。新たな価値のスピーディーな創出を後押しする為、人が人の知恵を組織の垣根を越えて呼び寄せる「吸人力」、それを支える上下左右全方向からの「評判の良さ」が、次の成長に向けて考えるべき人材育成と評価の尺度になるのかもしれない。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年6月11日  竹内上人

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