目白からの便り

熱処理とキャリア

みなさま

今朝の都内は、曇り空から春の日の強い光が差す。天気は回復し、桜の開花も進みそうで楽しみである。

ロータリークラブの会合で熱処理の会社を伺う機会を得た。熱処理とは金属に急激な熱を加え真っ赤な状態にした後に再び急激に冷却させることによって強くしなやかな鋼材へと『変態』させることである。この作業を繰り返すことによっていっそう強くてもしなやかな材質に変わっていく。

工場の中で熱く熱した鋼材が急激に冷やされ、黒光りした鋼材へと変わっていく様を眺めながら、人がしなやかに力強く成長していくこともこうしたことの繰り返しなのかと考えていた。

順風満帆なキャリアだけだと逆境になった時に対処する力量を持ち合わせないことがある。職業生活において精神的にも身体的にも耐えうる一定の範囲の職務上の試練を段階的に経験することによって、その人の職務遂行能力の労働品質は格段に向上していく。
上司となる管理職は部下の一人ひとりに課す仕事経験を冷静に見守りながら成長を計画的に促していくことが役割でもある。

おそらく上司と部下の人間的関係だけでなく、人の集合体としての組織の強靭化プロセスも同様なのであろう。職場や会社そのものが強くなっていくプロセスには難解な経営課題を幾度も経験しながら個人の成長と組織の成長が促される。

人は、そのリアルな困難に対面すると時々逃げ出したくなるような感覚に襲われたり、他者に責任を転嫁したくなる衝動にかられる。
人間の心情としてもっともなことなのであるが、困難な機会を良質な修養の場として前向きに格闘しながら向き合うことができればと願う。

企業の人材育成でも家庭の子育てでも形態や程度の差こそあれこうしたプロセスの繰り返しの中で人は細かな年輪を重ねていくのであろう。
年輪の多さと年輪そのものの良質な経験からくる重厚さがかけがえのない価値となる。暴風雨でもそうした年輪を有する樹木は簡単に倒れない。

苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むという古の言葉が脳裏に覚醒する

今日一日が良い一日となりますように、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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