目白からの便り

組織マネジメント 地域のお祭りの価値

先週末、実家のある愛知県高浜市へ帰省した。折しも、地域の春日神社で例大祭「おまんと祭り」が行われていたため、久しぶりに散策を兼ねて参拝した。この祭りでは、境内に設けられた馬場で馬を走らせる神事が執り行われる。幼い頃の思い出をたどりながら、境内の賑わいに圧倒された。こうした地域の祭りは、単なる伝統行事にとどまらず、地域社会における組織マネジメントの縮図でもある。境内には地区ごとのテントが並び、長老から若者まで幅広い世代が集う。各地区が馬を出し、若者たちが馬場を駆け巡る。その光景は、地域社会の多層的な組織構造を可視化するとともに、フォーマル組織とインフォーマル組織が重層的に機能することで、地域の安定性が保たれていることを示している。

祭礼の運営には、地区代表や役割分担などの公式な仕組みがある一方、若者の活力、長老の統率力、女性たちの支援といった非公式な力も自然に働いている。組織論の古典で知られるチェスター・バーナード *1)は、公式組織と非公式組織が相互に補い合うことで、組織の持続性が支えられると説いた。地域の祭りは、まさにこの理論を体現しており、制度と慣習が結びつくことで地域の結束を強めている。

また、祭礼は地域の「小集団競争」を生み出す。地区ごとに馬を出し合い、技量を競い合う構造は、「自然発生的な小集団」が地域の安定性を支える構図につながる。競争は対立を生むだけではなく、集団内の役割分担を明確にし、互いの存在感を高める機能を持つ。若者は技量を示すことで集団内の位置づけを得、長老は統率力を発揮することで信頼を集める。こうした役割の再編成は、地域社会におけるリーダーシップの形成にもつながる。

さらに、祭礼は地域の「人材育成」の場としても機能する。地域の祭りのような場では、学校や職場とは異なる評価軸が立ち上がり、個人は新たな役割を経験する。普段は目立たない若者が馬場で喝采を浴びることもあれば、年配者が自然に人々を束ねる姿が尊敬を集めることもある。こうした経験は、地域における「役割の多元性」を育み、個人の自己肯定感や社会的資本を高める。

地域の組織マネジメントは、企業のように明確な階層構造や評価制度があるわけではない。しかし、祭礼のような場では、自然発生的に役割が生まれ、リーダーが育ち、集団の結束が強化される。これは、地域社会が持つ「自律的な組織形成力」であり、形式的な制度だけでは説明できない力である。

地域の祭礼は、個人が複数の集団に属し、複数の役割を持つことで自らの価値を再確認し、組織対するエンゲージメントを高める効用を示している。企業においてもインフォーマル組織の積極的な活用を人事管理の施策として積極的に試してみたい。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2026年10月9日 

◆ 脚注
*1チェスター・I・バーナード(Chester I. Barnard)
『The Functions of the Executive』(1938, Harvard University Press)は、20世紀組織論の礎を築いた古典であり、公式組織(formal organization)と非公式組織(informal organization)の共存を初めて体系的に論じた著作として高く評価されている。バーナードは、組織の存続は「協働体系(cooperative system)」の維持にかかっており、その協働を支えるのは制度的な役割分担だけではなく、構成員同士の信頼・慣習・非公式のネットワークであると指摘した。

(コラム週報のバックナンバー)
https://mcken.co.jp/category/weekly-column/

(e-learningの情報 人事やキャリアに関する講座)
https://mcken.co.jp/e-learning/

(学習院大学でのキャリアデザインの講座内容)
https://www.asahi.com/thinkcampus/pr_gu_5/

(note)
https://note.com/mcken_takeuchi

関連記事

新着コラム

  1. 組織マネジメント 地域のお祭りの価値

  2. McKEN 木鶏会 Mokkei-No.385号-20261002-坂村真民

  3. 「留学生教育学会と日本労務学会に参加して」 その2

PAGE TOP