目白からの便り

『新成人おめでとう』、頑張れ!自分

昨年の11月、作家の伊集院静さんが、この世を去った。私だけの感じ方かもしれないが、昨年は私にとって馴染みのある方々の訃報にことさら多く遭遇した印象が強い。ちょうどこうした同世代の接点にかかる人たちの年齢と自分の年齢が交差してきているのかもしれない。伊集院さんの逝去の報道を聞いて、その死を嘆くということ以上に、毎年、新聞を開きながら楽しみにしている1月の成人の日と4月1日の新入社員を歓迎するサントリーの企業広告で添えられるメッセージがどうなるのだろうという戸惑いが重なる。

今週の月曜日、1月9日の日本経済新聞の朝刊をインクのほのかな香りと、確かに実在する紙の手触りの感覚を味わいながら、紙面を手で伸ばしながら、1ページずつめくっていく。今年も同じように若い人たちに向けられた励ましの言葉に出会うことができるのかという不安と、いやいや、自身の病気を超え、作家というキャリアを極めた人の仕事に対する周到な気構えで、既に寄稿の準備は万端整えられているのだという期待が交差する。

しばらくページを進めていくと、その記事は新聞の下段にどっしり構えられ、その存在のオーラを視覚的に発していた。「やっぱり、ちゃんと準備されていたんだ!」そう勇気づけられた。言葉の最後に編集部の方が、原稿は昨年10月に執筆準備されていたとのこと。

今年のタイトルは、「誇り」であった。

新成人おめでとう。
今日から君は新しい道を歩んでいくことになる。
この道には懸命に生きる人の誇りがある。
誇りを持って生きること、それは私たちの務めである。
誇りとは何か?
それは信念を持って歩いて行くことだ。
今まで同様、誇り高い道を全うしてくれ。
大勢の人がそれを望んだように、
あなたもまた、自信を持ってその道を歩んで欲しい。
そこには必ず生きる喜びがある。
君の人生の肝心がある。
さあ、頑張って私たちの明日に向かおう。

大切なものを抱いて、進むんだ。

書き手の存在を失った至高のメッセージがその時を超えて。言葉として綴られていた。

私は、今年の4月から都内の大学でキャリアについて想い、探求し、人に伝える場をしばらく続けられる機会を頂いた。自己の歩むべき職業の指針と合わせて、どのような場面でも前に踏み出す原動力であり、逆境に向き合う時に吹き飛ばされない軸となる自分自身のオリジナルな価値観を持つことが大切であると考えている。それが伊集院さんのいうところの大切に抱き続ける「誇り」なのかと思う。

キャリアは新成人の人だけのテーマではなく、私のように人生の最終コーナーに差し掛かった者にとっても自らの生き様を完結する上で向き合うべき重要な課題でもある。そして、自分に少しでも余力があれば、次の世代の為に想いを巡らし、行動したいと願う。様々な個性と想像を超える潜在能力の可能性を肯定的に捉え、孤立させずに声をかけ、支えていく気持ちを持ちたい。最終コーナーを周り、最も盛り上がる最後の直線を順位を気にせず颯爽と駆け抜けたいものである。

頑張れ! 自分、

新年あけましておめでとうございます。今年ももうしばらくお付き合いいただければ幸いです。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2024年1月12日  竹内上人

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