目白からの便り

リーダーシップの真骨頂

早朝の伊勢の空は薄い雲が所々に点在する。陽が出ないこの時間帯では詳細な天気は予測できないが、きっと快晴の空に恵まれるのであろう。。

大学の後期の講義では、EQ 「こころの知能指数(Emotional Intelligence)」(Daniel Goleman 1995) を基礎においた構成で、Business Communication やLeadershipについて理解を深める講義に取り組んでいる。企業人事の仕事に長く従事してきた経験の中で、組織で影響力を発揮する責任者の多くは、職務に精通しているだけでなく、人の気持ちを察し、励まし、仲間との連携を促し、倫理的に職務に向き合うように導くことが長けているとつくづく感じる。

こうした能力は、持って生まれた「人柄」といえばそれで話が終わってしまうのだが、訓練によって開発されるべき可能性があるのではないかという望みを強く持っており、生徒にEQ効用を少しでも伝えたいと願っている。

EQの講座は3講座あり、基礎講座は、EQの基礎的な構成とそれぞれの理解を深める。中級講座では、基礎講座で学んだ、EQの各要素を生徒たちが主導して理解を深めるビデオを制作する。そして総括となる応用講座では、EQを他者に伝える為のトレーニングプログラムをチーム活動で組み立てる。またそれらの活動を通じて、学生一人一人が自らのリーダーシップのスタイルを振り返るように構成し、EQとの関連性を深く考えてもらう機会としている。

リーダーシップの概念では、司令官型(Commander Leadership)、親方型(Master leadership)、参謀型(Bureaucratic Leadership)、献身型(Servant Leadership)の四象限を考案した。簡単な分類技法を活用して生徒自ら振り返る。

毎年この時期なると鮮明に思い出す風景がある。企業に入社して一年目のちょうど今頃の時期、腕時計の製造会社に出向し、人事の新米として働いていた。
事務局として、勤続35年の永年勤続を祝う祝会をホテルで立食形式で行っていた。その会の後半、社長が床に胡坐を組んで座り、出席者を促し、車座になってお酒を飲みだした。ホテルの従業員は驚いた様子だったが、その輪がどんどん大きくなり、いくつもの輪ができた。永年勤続の表彰を受けた社員の多くは、勤続年数が長く、時計製造に長年勤めてきた製造現場の年配の方がほとんどだった。立食で歓談していた形式的な表情だった顔が、普段の顔に変わった瞬間だった。大学を出て間もない私にとっては、衝撃的な出来事で、30年以上たった今でもその風景と、当時の社長が、ひとり一人にお酒を注ぎ、ねぎらいの言葉を、満面の笑みで接している映像が刻まれている。リーダーの神髄を見た。合理性の限界を超えた影響力はこうした行動を自然体で起こすことができることなのかと。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

伊勢にて 竹内上人

関連記事

新着コラム

  1. 学習版 「労働の価値 英国ペンキ職人」

  2. ものつくり大学 卓越したひとづくり

  3. スプリングドライブの夢を読んで 自らのキャリアの聖地を偲ぶ

PAGE TOP