目白からの便り

回想 自身をマネジメントし、人との良好な関係を促すEQ(ここの知能指数)

今朝の名古屋市内は灰色の雲と弱い雨に包まれている。市内も徐々に日常を取り戻しているようだ。

1996年7月に講談社から『EQ 心の知能指数』と言う書籍が発行された。心理学の研究者で科学ジャーナリストのダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)という方が書かれた本である。私の書籍棚にもこの白いハードカバーに覆われた本が他の心理学関係の本とともに静かに並んでいる。書籍の中では知能指数:IQ(Intelligence Quotient)が高い人が必ずしも社会で人々に良好な影響力を発揮し、なにかしらの価値や貢献を果たしているというわけでなく、「優れた感情の使い手」もその価値創出の担い手になっていると提唱する。(米国では1995年”Emotional Intelligence” という表題で出版:Bantam Books)

その書籍の存在を知らない2000年頃、私は前職で人材育成を担当していた。私が37歳の頃、今は故人となった当時の社長から管理監督者として、どのような身の処し方をすべきかということを研修プログラム化して欲しいという指示を受けていた。彼の言葉では「人間学」のような内容だという。この難題に答えを出すことができず、中国古典や新田次郎氏の雪中行軍の書籍を映画化したものを題材にした研修化など試行錯誤を繰り返した。ある時、湖が一望できる湖畔の本社管理棟の7階にある社長室に呼ばれ、「竹内君、世の中に“EQ”というものが最近評価されているようだから、調べてみたらどうかアドバイスをもらった。」この時、私はこのEQという言葉を初めて耳にした。

それ以来20年間、EQについて、キャリア支援の現場、企業研修や大学講義の中で関わってきている。自己の感情の様々な特性を個性(パーソナリティー)の一部として変えることができないという考えを改め、適切な訓練により、戦略的なキャリア上の資源として開発できる能力であると考えるようになった。企業で創出される製品やサービスの出来栄えや品質について多くの労力と投資をする一方で、人事屋として、それらの企業価値を生み出す経営資源としての「人」に対して、専門能力や知識の取得、技能訓練などのIQに関わる領域に人材開発の中心軸を当てすぎてきたのだと反省もした。

自分自身を励まし、人を勇気づけ、人の心遣いを素直に受け止められる気持ちの平静を保つことは、良質な人間関係と仕事を通じての価値を生み出す貴重な原動力になる。感情を可能な限り数値化・分析し、適切な訓練と自己鍛錬により人間的な成長を促し、仕事の品質も向上する。人事屋としてキャリアの現場でEQの概念を活用していく意義を確信するようになった背景である。20年前、この大切な気づきを与えてくれ、この分野に携わる多くの人たちとの交流の機会を与えてくれた故人に心から感謝している。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2020年6月19日  竹内上人

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