目白からの便り

武相荘 プリンシプルについて

今朝の松本は、刺すような寒さは感じられない。ただ、北アルプスは、深いグレーの雲でしっかり覆われている。3月3日、暦の上ではひな祭り、もう春も近い。今日は健康診断の予約を入れている。一年間の不摂生の指摘を反省する日でもある。

東京都町田市にある白洲次郎氏が暮らした「武相荘」に友人と訪問する機会を得た。長い間、その場所で空気感に触れたい場所の一つであった。

白洲次郎氏に関する書物を幾度か触れるたびに、また数年前にNHKで放映された長編のドラマを観た以降、たびたび登場するこの「武相荘」という場所がどんなところか直接訪れたいという衝動にかられていた。
白洲氏は、戦後処理に吉田茂首相の側近として、GHQとの折衝に携わるのであるが、GHQ側からの印象は、「従順ならざる唯一の日本人」と称された人物である。
特定の個人なので、人によって評価は様々なのであろうが、私の心情には、「格好の良い人物」の最右翼として位置づけられている。
白洲氏は、物事の判断基準に彼自身の定めたプリンシプル(Principle)を大切にしていた。 プリンシプルとは、「原理・原則」、「公理」、「行動の基準」、「根本方針」の意である。
時として、周囲の空気に迎合して、平凡なる日常生活を過ごす身からは、なかなか厳しい指摘である。あいまいな空気の中で、時流に流され判断して深い思慮に欠ける行動をとってしまうことが幾度かあり、その折々に自分自身のプリンシプルの脆弱さとあいまいさに後悔を繰り返す。

些細な日常生活の所作にもこのプリンシプルは息づくのであろう。日常の所作に配慮を欠いた弛緩した生活を続けていると、大切な判断の時にその実行が危ぶまれたりもする。
そうした日常訓練もともなうのかと思うと、なかなかこの「プリンシプル」を追求することはやっかいでもある。

キャリア(仕事)の選択におけるプリンシプルも同じように大切な基準である。何故この仕事を選択したのか、仕事に対峙する時にどのような原理原則で立ち居ふるまうのか、仕事を通じてどのような価値を創造し、他に対して何で貢献するのか。仕事と生き方は切り分けられないところがあるし、連続した時間の流れの中で分断してしまうと自己矛盾を起こす。できれば一貫したプリンシプルが欲しい。

この週末は、件の「武相荘」で買い求めた数冊の白洲次郎氏や白洲正子氏の書籍を、雛あられをほおばりつつも、進みつつあるわが身の老眼と格闘しながら時間を過ごそうと思う。

少しずつですが、春の訪れの気配も感じます。週末にむけては少し天候も崩れかけてくるようですが、お身体ご留意ください。今日一日が良い一日となりますように、また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

松本にて 竹内上人

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