目白からの便り

多様化を積極的に受け入れる努力を続けること

今週、パネリストとして参加したカンファレンスで、日本に身を寄せる難民の方を難民としてではなく、日本での就労を実現する人材としてキャリア支援の活動をしている方とご一緒した。私にとっては、初めての風景でもあり刺激を受ける。想像を超える多様な人たちの可能性と想像を超える困難を乗り越え日本での活躍の場所を懸命に探している人たちと、支援者の方々が取り組んでいるメッセージが脳裏に沈殿する。そのことを考えながら、自分自身のことを考えた。

『・・・最後に若干提言を書き加えたい。現在、障害者個人が各々自立して民間企業で活躍することがノーマライゼーションの観点からいってもっとも大切なことは周知のことである。しかしながら、重度の障害を持つ方全員にこれを求めていくことは非常に難しいと思う。最近各地域に障害者をもつ父兄、支援者の方々が中心となって障害者の生活面でのケアもできる作業施設設立の動きが盛んになってきたが、経営的に事業展開するのが非常に厳しいのも現実である。こういった施設に対して官庁、民間が業務発注すれば、発注元の雇用率にカウントできるようなしくみが法的に整備できないだろうか。・・・』 平成9年8月発行 日本障害者雇用促進協会 「障害者とともに働く」より抜粋。

私が、今から約25年前の34歳の頃に寄稿した文章である。前職で障害者雇用の担当者として、知的障害者のクリーンルームで使用する防塵服のクリーニング工場を重度障害者多数雇用事業所施設の適用を受け設立した時期のものである。10名の新規知的障害者雇用、3億円の設備投資。社内の起業化公募制度を活用して取り組んだ。

障害者雇用率は、当時は(民間企業適用)が1.6%から1.8%に変更される時期であった。今年、令和3年3月1日から民間企業は2.2%から2.3%に引き上げられている。行政の指導もあり、世間の関心も、企業経営者の認知も高くなってきた。それでも、企業の障害者雇用の実務担当者の幾人かは、経営の十分な支援や関心を受けられず、今でも恐らく孤独な戦いをしていると思う。

障害者の雇用環境インフラの構築が、私が8年前に自らのビジネスをスタートする起点でもある。事業理念の中に、障害者の働く小規模施設に民間企業や行政機関から仕事を受け渡すインフラを構築したいと示した。本当に実現できるか、妄想に終わるのか、勇気づけられることがあったり、気分が滅入ることがあったりと心が常に揺れ動く。

現在取り組んでいる人材紹介や中小企業向けの経営支援、教育・人材育成の事業は、教育関係の教職員の方や、企業の経営者、人事の方などを知る機会が多い。自分の想いを実現するために少しでも多くの理解者を得るためには、最適な環境である。

『できるかできないか、そんなことはどうでもいい、人間は何をしたかではなく、何をしようとしたかが大切なのだ』、こんなようなセリフを俳優の高倉健さんは映画の役柄を通じて語っていた。先日、あるミュージシャンの歌を聴く機会があった。10,000回だめで、へとへとになっても、10,001回目は変わるかもしれないという歌詞のメッセージ。勇気づけられ背中を押される。難民、障害者、女性、シニア、多様性を積極的に受け入れ、共生する社会システムはきっと力づよい原動力を私たちに与えてくれるに違いない。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年8月27日  竹内上人

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