目白からの便り

オンライン講義で必要となるEQ(心の知能指数)能力の可能性

大学での講義も始まり、春学期も新しい学生との接点がスタートした。昨年に引き続き、オンライン(遠隔)を通じた授業となり、モニター画面を通じて生徒との対話が進む。一年前の今頃は、オンラインでの授業方法自体の環境整備の段階であり、大学の教務関係者の方は相当苦労したのであろう。教える側も慣れないリモート講義システムの操作性に悪戦苦闘しながら講義がスタートした。リアルな対面型の講義に可能な限り近づけたいという思いが高ければ高いほど、その格差に戸惑う。

その反面、思いがけない利点もあった。私が担当していた幾つかの大学の中で横浜国立大学や東北大学、信州大学は国有大学特有の広いキャンパスや、学部ごと異なる地域に講義棟がある。リアルな対面型の講義の場合、学生は講義の間の10分間の休憩時間に物理的にも無理であろう講義棟の移動を試みなければならない。たとへば、東北大学の理学部・工学部などがある青葉山キャンパスは丘陵地の山頂にあり、私の講義が行われる青葉山中腹の川内キャンパスからは距離がある。受講する学生は、山の上から降りてきて、20分程度遅れて授業に参加し、再び下ってきた道を上ることになる。履修時に遅刻するが、履修は大丈夫かという相談を受けてのスタートだった。それが、リモートになった昨年から、オンラインのチャネルの切り替えだけで講義に参加できる機動性を学生たちは得ることとなる。

また、講義の中でのグループワークの運営も大きく変わった。講義の中で数人のグループを編成する場合、その都度、教室内の机のレイアウトを変え、時にはグループ間で移動する為に多くの時間が割かれた。レイアウト変更や、グループ間移動での学生の動きは、会社組織とは異なり、きびきびとした行動訓練がされていない分、思いのほか時間がかかる。オンラインでの講義ではその空間の時間を割かれることなく、グループに分かれ、全体講義の場に強制的に戻され、講義の生産性は格段に向上した。

しかしながら、オンライン講義での学生間の交流は味気ないものとなるのであろう。持参した水筒の中身の話題や、お菓子類の分け合いから生まれる非公式の会話、その機会から派生する友情の芽生えなどの人間的関係創出の場は少なくなる。デジタルな講義空間では、講義コンテンツの質的な充実のみではなく、可能な限り人間的交流を促し、学生間相互で親近感をもつ工夫が大切であると感じる。感情を伴う交流に思いがけない発想のダイナミズムや思考のイノベーションが誘発されるのだと信じたい。そうした意味ではEQ(心の知能指数)の概念や能力を習得することはデジタルなプラットフォームでの学習が進めば進むほど大切な要素になる。今年もEQの講座を幾つか行う。制約された環境の中で、リアルに対面した時以上に人間的交流経験から生じる気づきが学生に伝わればと願う。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

竹内 上人

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