目白からの便り

共生という言葉が語りかけるこれからの可能性

4月は学校にとってだけでなく、社会人にとっても区切りの時であり、新しい環境でスタートをする時でもある。私がキャリア設計において関わった方の幾人かの方も新しい会社、新しい職場での仕事に取り組む。順調なキャリアを歩めることを願う。一方、大学の講座は、EQ(心の知能指数)を基礎に置いたリーダーシップ論や日本的経営の環境を踏まえたキャリア設計理論についての講座がスタートする。

キャリア設計の講座では、1958年にアベグレン氏の「日本の経営」(訳者:占部都美氏Urabe Kuniyoshi)が示した日本的雇用の特徴として、「終身雇用」、「年功序列」、「企業別組合」について、授業のディスカッションテーマに組み込んでいる。これらは、1972年に松村正男氏(当時:労働事務次官)が「OECD対日報告書」で3つの特徴をまとめて日本的雇用の「三種の神器」という卓越したネーミングで広く日本の経営者、人事の人たちに刷り込まれてきた。海外の研究者が日本の競争力の源泉と指摘し、この効能を神的なネーミングで企業現場に浸透させたことにより、企業現場でその機能に更に拍車がかかったのではと思う。近年は、これらのシステムは既に日本企業には定着しておらず、過去のものであり、日本の企業競争力を棄損している負の遺産になっているといった論調も増幅される。

講義の一部では、終身雇用、年功序列、企業別組合について、一つひとつのテーマについて、5人~6名のグループが取締役会メンバーとして、自分たちが会社の経営者であれば、このシステムを採用するか、しないかについて議論し、その決定を全体で発表する。今日に至るまで定義化された日本的経営論には、支持者、批判者、中立派 様々な意見や見解があるだろう。その議論を通じて学生一人ひとりが自身の職業観を深く考えてもらえればと願う。

日本は、現在50歳から55歳の団塊ジュニア世代が現役から徐々に主導権を次世代にバトンタッチしていく10年後から、少子高齢化の現実を実感値として向き合うことになる。現在の社会基盤や企業競争力を確保するために、若く、物怖じしない、多様化に柔軟に対応できる人材の活用が、企業にとっても社会にとっても不可欠になる。日本人だけでなく海外の多様な人材を組織や社会に、仕組みとしても、精神的にも受容し、共に生きていくという価値が一層輝きを増してくるのだと思う。「共生」は日本の社会や組織にとって切り札となる新しい価値になるだろう。その先導役として、この価値をこの十年で標準化し、企業が組織においての卓越した能力に転換していくことが一層重要になると思う。現行の組織制度をリフォームしながら、新日本的経営の神秘として磨かれることに人事屋として尽力したい。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

竹内 上人

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