目白からの便り

知識、経験のデジタル化の意味・・・人事担当者の課題

二十四節でいうところの立夏を超える。松本城の公園にある藤棚もこれからが見ごろである。5月に入り少しずつ、陽の日差しも強くなってくる。屋内で時間を過ごすことが多くなり、持て余し気味の身体の為に外での散歩も日中は汗ばむことに加え、皮膚に太陽の光がじわじわと吸収されるのがわかる。

4月の下旬から、大学の講義もスタートし始めた。今年はインターネットを使った講義形式に様変わりしている。最初にスタートした東北大学では、google classroomを活用しての対面型授業となった。講義テキスト等を自分の講座に投稿し授業時間に通信回線を通じ生徒と対面型講義を行う。来週から始まる横浜国立大学や学習院大学もシステムは異なるが、しばらくはインターネットを利用した講義になる。

コロナウイルスの感染予防で働き方が大きく様変わりしている。会社では、物理的な移動を避けデジタルな空間での会議や面談が行われ、学校では学生が自宅から講義に参加する。高校教諭をしている妻も、自宅でホワイトボードにプロジェクターで教材を投影し、配信用としての授業を動画で収録している。大学に入学した長女も2週間前からインターネットを使った講義がスタートし、自宅でPCの前に向かう日常になっている。コミュニケーションの仕組みが大きく様変わりしたことは確かである。

今から600年ほど歴史をさかのぼり、1440年頃にドイツ人 金細工師のヨハネス・グーテンベルク(Johannes Gutenberg1398-1468)が金属活字を使用した活版印刷技術を発明した。それより以前に中国では、木版印刷での印刷も始まっていた。印刷技術の革新と普及により、既存の情報を保持できた者の社会的、経済的な特権を劣化させ、情報特権階級を介さず広く社会に情報が伝播しやすくなり、社会秩序と社会階層の変化を誘発した。

知識・経験のデジタル化の「使い手」があらゆる職業に広がった意味は深い。個人の持つ経験値や熟練度、知識や見識といった価値がデジタルに変換、瞬時に水平方向で共有され、電子データとして蓄積され、時間的な融通性が高まる。情報の発信者はいかに良質で共感的な情報コンテンツに仕立て上げるかに苦心し、情報の受け手は、供給者を場所と時間的な制約を受けずに選別する権利を有することができる。情報的価値を、既存の組織の枠組みで調達する必要性が低下し、個人のキャリアも所属組織を超え、普遍的・多層的な供給が可能になる。組織にとっても有益な人的資源を広範囲に調達する意欲が高まる。人事担当者は、いかに彼女、彼らを内部に取り込むか、組織内の制度設計も含め可能性が広がる。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

2020年5月8日 松本にて 竹内上人

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