目白からの便り

リスクを取り続けることは、リスクを最小化する

4月から始まった春季課程も瞬く間に学期末を迎える。キャリアデザインの講座では、この4ケ月間で学んだ総まとめとしてプレゼンテーションを行う。こうした成果発表では、私の学生時代とは異なり彼らのITを駆使した表現能力は卓越している。

自分自身の職業戦略を定めるキャリアデザインの講座では、日本的経営について考え、面接における自己表現をどのようにするかを構成し、合理的な企業選択のプロセスを基礎に長期的なキャリアビジョンの設定と達成シナリオを考える。今学期も、もなによりも私自身が講座を通じた学生との交流で多くの気付きを得た。

この時期、記憶によみがえる言葉がある。5年ほど前の講義の最終日、それは、一人の男子学生のプレゼンテーションの最後のページに彼のパーソナルブランドとして示されていた。『悩まず、ためらわずにやってみたらいい、死にはしない!』ということが記され、l can’t のn’tの前にハサミが入れられ、l can を示す写真が挿入されていた。よくある言葉かもしれないが、私にとって、とても新鮮で背中を押される言葉であった。

年を重ねる毎に思慮深くなり過ぎ物事に躊躇するようになる。無分別に変えることは避けたいが、今までの行動範囲を広げ、可能性を引き出す自分自身へのイノベーションは意志をもって問いかけ続けるものなのだと、その当時の20歳前後の学生の言葉に勇気づけられたことを思い出す。

10年前、安定したサラリーマンから自ら起業し、事業を行うことのリスクに不安と躊躇を覚えていた私に大学の先輩からアドバイスを頂いた。

『あのね、竹内くん、リスクをとっている時が、一番リスクが少ないんだからね』

すぐにこの意味を理解できなかったが、じわり、じわりとわかってきた。そうか、リスクとは、現状とその状態を失ったと時の差である。リスクを取り続けるとその差が最小化する。つまり、リスクがない状態になるというのである。自分にとって、果たすべき仕事や役割に常に前向きな工夫と積極性を持ち続け、チャレンジする姿勢もちつづけること、この姿勢がリスクを最小化するのである。

慣れ親しんだことから、少し背伸びした自分に変容する時は、不安や恐怖が付随する。そんな時こそ、楽観的に自分自身を鼓舞して、”I can” とスイッチを押すことは、リスクを最小化し、可能性を最大化する。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2023年7月14日  竹内上人

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