目白からの便り

アポロ13号から学ぶこと

早朝の都内は、グレーの厚い雲に覆われている。長雨のせいか少ししっとりとした空気に包まれている。今週も不安定な天候が続く一週間が続く。

8月は大学が夏休みの期間に重なるので、企業研修の依頼を予定に入れることが多い。新入社員研修にしても管理職研修にしても、可能な限り表面的なスキルの速習をするのではなく、職業人としての担うべき役割とその鍛錬の方法について考える機会提供を試みる。古風な方策かもしれないが、頼りになる人物を育てるには堅実な方法である。

研修では、よくケースを活用する。今週は、「アポロ13号」のケースを活用して、チームビルディングについて学んだ。
1969年7月20日にアポロ11号が月面に着陸し、ニールアームストロングとバズ・オルドリンが月面に降り立った。続いて、アポロ12号のビート・コンラッドとアラン・ビーンが月面に着陸した。
そして、1970年4月11日(土曜日)午後1時13分、ケネディ宇宙センターからアポロ13号が打ち上げられる。

アポロ13号は、アメリカの宇宙開発計画が順調に推移していた中で、宇宙空間での酸素タンクの爆発事故によって、絶望的に危ぶまれた深刻な状況を克服し、無事3人の飛行士の地球への帰還を果たした実話である。実話はその後に加筆された部分がある可能性があるが、事実に基づいているので、組織における人間の行動美学をリアルな感覚で、自分の実行動と思考特性と対比しながら振り返ることができるし、物語自体を脳裏に刻むことにより研修での気づきを持続させる。

物語の主要人物である、首席飛行実施責任者のユージン・クランツ氏の組織をけん引する姿から、自己の思考と行動特性を検証する。その当時の彼の年齢は36歳。宇宙飛行士自体をキャリアの目標にしながらもそれが果たせず、管制官の仕事に就く。

現場の飛行士のことを我がことのように感じ、NASAのすべての英知と総力を結集して、困難な局面を乗り切る。キャリアの可能性は、様々な偶然も影響する。しかしながら現在与えられているキャリアの現実には、それぞれの理由と背景がある。多くの方の支えでその役割を担っている時間の積み重ねがある。

今日、担う仕事に対する目標や価値を見失うことはしばしばある。他社と比較して見劣りがすると悩むこともある。主席飛行実施責任者のユージン・クランツも宇宙飛行士を送る側になった。

私たちが向き合う仕事には、今に至った時間の積み重ねの中における偶然であるが必然として担うことになった役割でもあり、直接的ではないにしても間接的に支えてくれる人の存在を積極的に受け止めることでもある。今の仕事に真摯に向き合うことは、その偶然を超越した必然とエールを送る応援者に包まれていることを感じ格闘することなのかと思う。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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