目白からの便り

自らの価値基準を堅持する為の位階と官位

今朝の都内は強い日差しが差し込みビルの壁面やガラスに反射して四方八方にその輝きを届けている。新緑の中の強い光も気分を爽快にするが、高層ビルのガラスに反射する陽の光からも強いエネルギーを感じ気持ちも高揚する。

何気なく、長女の国語のガイドブックのページをめくった時「官位」に関する一覧表を解説するページがあった。官位については、深い知識がなく、「大納言」とか、「中納言」などの言葉の意味合いを知らずに今まで過ごしてきた。ページ両面を使って、「官位相当表」というマトリクス表で解説が加えられていた。これが人事の視点で眺めると興味深い。

職能給制度に支えられた戦後日本の賃金制度は、担っている仕事の種類によって支払われるものではなく、それぞれの働く人の経験や能力によって位置づけられた職能資格に対して処遇され、組織の中での異動、再配置、育成の為のローテーションを個人に付与された賃金額に手を加えずに組織の都合によって柔軟に配置できる仕組みを作り出した。また、働き手にとっても、それぞれのキャリアの確固たる軸をさまざまな仕事を経験することによって自らに最適な職種を見出す機会の多様性を得られた。

この「官位一覧表」を眺めながら、すでにはるか平安時代以前の古から、日本は職能給だったのかと気付かされる。官職としての「太政大臣」は、資格としての「位階」は「正一位」か「従一位」の位階をもつ人材が任用される。「少納言」はというと、少し下がって、「従五位の下」という位階を持つものが任用される。軍事を司る近衛府の「少将」という官位を担う位階は、「正五位の正」が相当する。

学生時代、さまざまな会社の賃金体系の歴史を紐解きながら、日本の労使関係のエッセンスを探ろうとしていたが、そもそも、その原型は、この官位任用の仕組みにあったと知り、その歴史の長さと人々の意識の根底にあり続けた「人」が仕事の価値を生み出すという考え方の重さを痛感する。

四月の人事異動を経て一カ月余りがたつ、新たに任じられた役割は自分を鼓舞するものであったり、意気消沈させるものであったりするかもしれない。周囲の評価は冷静に受け止めながらも、過度な高揚も動揺もするべきではない。今まで果たしてきた組織や共同体としての社会への貢献や誠実なる献身は歴然とした事実である。それを積極的に評価し、今後の役割を見失うことなく、自らの価値基準としての「官位」や「位階」を定め、人格を磨き続けることをためらわないことだ。

今日一日が良い一日となりますように、困難に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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