目白からの便り

バレーボールとコミュニケーション

みなさま

仕事の都合で、静岡県の浜松で朝を迎えた。朝焼けのオレンジの光がビル街のそれぞれの建物の外壁を染めて、きれいな色彩の朝を迎えている。

先日、横浜国大で、私が担当するビジネスコミュニケーションの講座を受講してる留学生と留学生センターの講義棟の建物の前庭でばったり会った。男子学生と女子学生の二人だったが、手にはバレーボールを持っている。とびきりの明るい声で、「先生、こんにちは」と声をかけられる。まだ授業までに少し時間があるので、二人でバレーボールをするという。しばらく二人が楽しそうにトスをしながらボールがお互いの手を行き来するのを眺めていると、会社に入社した頃の風景が浮かぶ。

今から30年前の当時、会社の建物の通路脇や前庭で、先輩社員がキャッチボールをしていた。最近はそうした光景を会社の中で見ることが少なくなってきた。そもそも、都会の企業では、そのような場所も限られるのかもしれない。植木等さんを有するクレージーキャッツが出演する昔の映画では、屋上で輪をつくってバレーボールをしている光景が撮りこまれていたが、屋上がそうした場に今もなっているとは今は想像できない。

会社の中で、仕事と少し異なる身体的活動を通じた社員交流の時間は、働く人たちの気持ちを企業人から普段の生活を楽しむ人間へ一瞬であるが切り替える時間である。

現在は、お昼休みの使い方が大きく変わったのだと思う。昼食をとる時間も限られたり、仕事のメールだけではなく、プライベートなSNSを通じたやり取りに忙しくなり、職場の同僚と身体を動かしながらコミュニケーションをとるという余裕がないのかもしれない。

お昼休みに行うバレーボールやキャッチボールはゲームではないので、あくまでボールを渡す側は相手が受け止めやすいボールを出すことに気遣う。一歩間違うと、ボール自体が側溝に落ちたり、道路に飛び出してしまうからなおさら注意深く相手が受け取りやすいボールを投げる。相手もそれを理解しているから安心してボールを待つ。競争や勝負ではなく、できるだけ長くボールを交互に交換しあうことを目的とする身体的活動は、精神にもよい影響を与えるであろう。

仕事におけるコミュニケーションもこうした良好な信頼関係の上になりたっていれば、お互いが発信する情報も好意的に受け止められ、円滑な業務に繋がる。

普段、自ら発信する電子メールが、相手の立場や状態を配慮して投げかけられていればいいのだと願う。
一方的な自己本位の考えや想いでは困難な課題や複雑な問題は解決しずらい、良質で誠意あるボールを投げ続けることにより相手の気持ちも融和し、協業的な環境が整う。
仕事はいかなる場合でもチームで行われる。人間的な信頼関係があるからこそ、良い仕事ができる。

今日一日が良い一日となりますように、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

浜松にて 竹内上人

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