目白からの便り

平凡なる非凡の価値

今週、世界的な規模で事業展開をしてる旅行・運輸企業で役員をしている方とゆっくり話す機会があった。業界的には極めて厳しい環境の中にある中で今までの取組が功を奏し同業他社と相対的比較ではその打撃の深刻度は軽微であるとのこと。社内の議論の中で、ともするとそうした自社の優位性を活かして競合企業に一気に攻勢をかけようという論調が闊歩する中、彼はこの非常時の困難な時こそ連携して業界全体が再起をするために何ができるかも同時に考えなければならないと語る。

自然災害など不可避的なことにより、仕事失ったり、変わったり、そうした環境変化のストレスから職場や家庭においてのハラスメントなどを誘引してしまい厳しい環境と向き合うこともある。他に話すことをためらい、誰にも理解することができないであろう本人だけが痛みと耐え続ける深い精神の火傷をおった出来事が積み重なっていくこともある。その一方で、結婚や出産、試験の合格、昇格や昇進など、喜ばしい出来事もある。どちらにしても、それぞれは、過去のことでもあり、今日はまた新しい一日が始まるということも事実である。

毎日毎日を驕ることなく、謙虚に、なんとか乗り切り、積み重ねていく、そうした、恐ろしく平凡な日常の連続に非凡なる今があるのだと。労使関係を専門にする恩師がよく講義の中で、『職業人の平凡なる非凡の価値』を論じていたのを思いだす。『職業能力蓄積の視点では、単調な日常の作業時間の積み重ねと、様々な困難な課題をなんとか乗り切りかわし、現在まできたこと自体が非凡な力になっているんだよ』と。あーそうなんだ、自分自身、一日一日をヨタヨタしながらもなんとかやっていること自体が非凡なことなのかとその言葉を思い出すたびに勇気づけられる。

EQ(こころの知能指数)の感情能力の中に「楽観力」がある。希望や機会、事態が好転する可能性を信じ、自分から前向きな展望をもつ力の大切さを問いかける。今までの時間を乗り切ってきたこと自体が非凡であるという自信をもって、今日からの新しい時間がもたらす可能性にむかって、おぼつかない足取りでも姿勢を低くし、一歩でも前に向かって歩むことができればと願う。その姿勢が新たな自分自身に対するイノベーションを起こし、困難を乗り切り人間的に成長する良質な機会となるのだと。

そして、冒頭に紹介した彼のように厳しい状況に向き合っている時こそ自社のことのみならず業界全体、働く仲間のことに心を配るといった職業倫理の精神を失わないことが、何年か後にその人やその企業の価値にきっとつながるのだと思う。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2020年11月27日  竹内上人

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