みなさま
昨夜の松本は、雨も激しく打ちつける嵐のような夜であった。何度か、雷の響きに覚醒してしまったのだが、起床してみると雨は峠を越したようでおさまっている。どんよりとした雲も残るが、青空が広がり美ケ原高原の先端の王が頭の山頂付近は、太陽の光で稜線のコントラストを際立させているし、背後に厚い雲の塊を背負っているものの北アルプスの山並みもその威容を誇っている。
都内のいたるところでリクルートスーツに身を包んだ学生の集団に遭遇した。就職に向けて活動している多くの学生にとっては、昨日、6月1日が実質的な内定先企業を確定し、試行錯誤した就職活動に終止符を記す節目となる。面接解禁日が、内定日となる傾向は昔から変わらないが、5月に入ると、その名の通り五月雨式に内々定を口頭で告げられた学生が安堵しながら、次は、どの内々定先に最終的に入社先を決めるのか悩む期間でもある。まだ活動中の学生にとっては焦りは募るばかりであろう。
人事担当者にとっても、内々定辞退がどの程度になるかひやひやしながら見守る日々もいったん終了する。
経団連に加盟していない企業の多くは、より早期に内々定をだすが、主要企業の選考活動が終了する節目となるこの日にならないと、本当に予定していた学生が自社を選んでくれたかどうか安心できないのもこのためでもある。
こうした新卒学生の選考スケジュールは、若干時期は変わるが、仕組み自体は、私が企業に入社し採用担当者として日々を過ごした30年以上前と全く変わっていない。
企業を選ぶ側の学生も、学生を選ぶ側の人事も、長い神経戦を繰り返すのであるが、学生にとってキャリアの意識の中には、どうしても「職種」の概念が欠落する。どの産業を選ぶのか、どの企業を選択するのかというところに神経のほぼすべてを注ぎ込むので仕方がないのであるが、入社後も、基準となる職業観をもつことなく、受動的に付与された専門的な経験を積み重ねることになる。幅広いローテーションの中で、人材育成を行い適材適所を突き詰めていくことが応用動作と思考に長けた人材育成にすこぶる有効であることは確かであるが、願わくば、基準となる専門領域を鏡にし、多様な職種と格闘することができればその経験の質は一層深いものになる。
「就職」という言葉が構成される本来的な意味は、やはり生涯歩むべき「職業」に就くという意味が語源としてあるのであろう。たとへ、本来の思考や想いと異なる職業についていたとしても、意識として自分の基軸となる職業は何かということを考え続けることが大切なのだ。
さもなければ会社を離れざる得なくなった時にキャリアにおける自己のアイデンティティーを失うことになり、途端に迷走する。企業にとっても単に年齢を積み重ねてしまった職業観に乏しい依存体質の人材を抱え込むことにもなる。
自らが寄って立つ職業観をもつことが、悪路が続いても、キャリアに卓越した操縦者になる。キャリアを深く考えるということは、生き方を考えるということでもある。
今日一日が良い一日となりますように、また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。
松本にて 竹内上人