目白からの便り

連用日記の効用

今朝の松本は、青空が広がっているのだが、北アルプスの稜線は、かすむような湿り気で覆われ、気温がこれからぐんぐんと上がっていくことを予感させる。昨夜の最終列車で、新宿から松本に戻ってきた。深夜に到着した松本駅は、もう冷気を感じない。確実に夏に向かって季節は移り変わっている。

昨夜、友人と食事をしている時に、友人がしばらく前に仕事において大変な時期があり、そうした耐えがたい時間をどのように乗り切ったのかという体験談から、「連用日記の効用」の話になった。
私自身はもう30年にわたって連用日記をつけている。現在の日記は、3年連用である。日記をつけ始めたころは、5年連用の日記を使っていたのだが、一日の余白が少なく、書き足りない事態に陥る日もあり、余白が少し広めの3年連用の日記に変えた経緯がある。日記は毎回、「高橋書店」出版のものに決めているので、構成の体裁が同じで使うにあたって都合がよい。

日々の振り返りだけではなく、その日に気づいた「言葉」を記録として書き足している。また、読んだ書物の「覚書き」や「引用文」が書かれている。

時々読み返すと、数年前の同じ日に、何をしていたのかということに目が留まる。その時の心境が瞬く間によみがえる。過去の連用日記を3、4冊同じ日を開き見比べることもあり、記憶が10数年前まで蘇る。
仕事やキャリアにおいて自分自身が困難な局面に向き合っている時に、どのように受け止め、どう乗り越えようと苦心しているかの手がかりがそこに切実な言葉になって残されている。その当時の苦悩ぶりが鮮明によみがえるが、その艱難に自分自身がどのように立ち居ふるまったか、また、どう対処したらよかったのではないかという指南書のような存在になっている。

書物から学ぶ対処法も良いが、リアルな自分から学ぶ知恵も代えがたい。

連用日記の効用に実利的なものもある。一年のサイクルの中で、日常的な営みで規則的に行うことを記録していくことによって、忘備録のような機能も果たしてくれる。加えて、翌年度、また3年後の日付の欄にどのようにしたら良いかを、予め書き込んでしまうことが極めて有用であることに気づいた。日常生活において学習する作業を連用日記の中で個人的に繰り返している。

日記を買い替える時にたくさんの余白がある1年タイプのものに惹かれることがあるが、きわめて個人的な事情の過去と未来をマネジメントしてくれる連用日記の効能が優先する。先週の週報で触れた「計画(プラン)」を過去の経験の蓄積を踏まえて自分自身に課すことができる。これは窮屈なことではなく「未来への牽引力」になる。

今年は、連用日記の最終年度なので、暮れには新しいものを買い求める必要がある。今の悩みは、その連用を3年連用にするのか、5年連用にするのか、自分の視界の広さと密度との葛藤が暮れまで続く。たかが日記なのだが、連用なので購入後の後悔が3年、5年も続いてしまうのがやっかいだ。

今日一日が良い一日となりますように、また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

松本の自宅にて 竹内上人

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