今朝の松本は氷点下1度、それほど気温は下がらなかった。雪を覚悟していたのだが、道路にうっすら白く湿度がない粉雪が覆う程度。時々週報をみて、長野の大雪の様子を心配される方から便りをもらうのだが、長野市と私が住む松本市の天気はたいてい異なる。雪の降り方も全く違うのである。どちらかが大雪の時は、どちらかは何ともないことが多い。
企業研修のプログラムの打ち合わせをする機会があり、グローバルコミュニケーションで必要な要件は何かということについて考える機会があった。グローバルという冠がついているので、そこには言語(端的には語学力であり、英語の力量を指す)の問題と、多様性(Diversity)を受け入れる能力が思いつくのだが、コミュニケーションを担う力という観点で考えてみると、そんなに問題は簡単ではない。
私は、コミュニケーションが成立するには、3つの要素があると思う。ひとつめは、「伝える力」である。これは件の企業研修のプログラム設計において、海外にある販売・製造現地法人とのビジネス上のコミュニケーションや、ガバナンスを行う上で「英語力」が日本の企業人には決定的に欠けているという切実な危機意識からくる。もっともな話で話せなければ、話にならない。また、敬語も含めた話し方や表現力もこの「伝える力」に入る
2つめは、相対する人間関係における「感受性」を受け取り、自己の感情を最適な状態にマネジメントする能力である。相手の心の変化を瞬時に且つ的確に読み取り、自己の心情をコントロールし、適切に対応させることができる感情のマネジメント力である。こちらは幾度か大学での講座の内容を通じてご紹介しているEQ (Emotional Intelligence Quotient:こころの知能指数)の卓越性に裏付けられる。EQ以外にもMBTI (Myers-Briggs Type Indicator) のように性格を16タイプに分けその違いと特徴を理解し活用するといったものもある。どれも適切に取り入れ活用すると「感情の優れた使い手」になることは間違いない。
3つめは、外交的関係性(Diplomatic Relationship)を理解し構築する能力である。相手にとって自分が有益な存在になるような関係性を演出する能力である。自国の首相も苦戦しているのであろう。3つのコミュニケーション能力の中で最も難易度が高い。①相手の困りごと、立場を理解し、同じ視点で考えること、②相手の期待値に適合する価値を提供できる要素を自己の保有能力や関係資本(人脈・ネットワーク)から抽出し提供すること、などである。前職で次世代リーダー育成のプログラム担当をしていた時に一橋の組織論の先生が「ディプロマシー:Diplomacy」というボードゲーム(第一次世界大戦前の緊張した関係にあるヨーロッパを舞台にした覇権を巡って争うボードゲーム)をプログラムに取り入れていた意図を今更であるが理解した。
昨日、夏のセミナーの会場施設の下見で軽井沢に向かった。軽井沢駅でビジネスパートナーの方と待ち合わせ、セミナーハウスに向かう。その方から道路の状態を配慮され、自分が乗っている4WDの車で一緒に行きませんかと誘われたが、長野県在住の気のゆるみもあり大丈夫です、とそれぞれの車に分乗して向かった。中軽井沢の別荘地区に入ると結構な坂の連続。案の定、私の車はセミナーハウスにもう一息のところで、アイスバーンと急こう配に妨げられ立往生。一瞬の相手から発する空気を的確に読み取っていれば、同乗し無難にセミナーハウスに到着できるはずであった。しばらく、レッカー車―を呼び寄せる時間を動かなくなった車中で、自分のコミュニケーション力のなさを悔やむこととなった。それもEQを教えていながら、「感受性の力量」の欠落であったので、恥ずかしい限りである。
まだまだ寒い日が続きます。今日一日が良い一日となりますように、また、良い週末をお過ごしください。新 しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。
松本の自宅にて 竹内上人