『 鈍刀をいくら磨いても無駄なことだと言うが、何もそんな言葉に耳を貸す必要はない、せっせと磨くのだ。刀は光らないかもしれないが、磨く本人が変わってくる。つまり、刀が、すまぬすまぬと言いながら、磨く本人を光るものにしてくれるのだ。 そこが甚深微妙(じんしんみみょう)の世界だ。だから、せっせと磨くのだ。』
坂村真民(さかむら しんみん) 1909.1.6-2006.12.11 日本の仏教詩人
「念ずれば花ひらく」や「二度とない人生だから」の作者
所感:
この言葉との出会いは、行きつけの歯科医院の待合室に置かれていた坂村真民先生の書籍を何気なく手に取ったことがきっかけであった。その後、先生の詩や随筆に惹かれ、講話や関連動画にも触れるようになったが、その言葉の奥深さと同時に、素朴でひたむきな生き方そのものに大きな感銘を受けた。
特に印象に残っているのは、晩年の坂村先生がご自宅で、一枚一枚の詩を封筒に入れ、多くの人へ発送する準備をされている映像である。そこには効率や成果を求める様子は微塵もなく、ただ淡々と目の前の行いを続ける姿があった。その姿を見たとき、私は「この詩を何人が読んでくれるだろうか」「どれだけ評価されるのだろうか」といった次元をすでに超越されているように感じた。ただ伝えたいから続ける。ただ書くべきことを書き続ける。その純粋な姿勢に圧倒され、今でもその映像が脳裏に焼き付いている。
人は年齢を重ねるほどに、その人らしさが顔や立ち居振る舞いに表れてくるように思う。それは指先の動きであったり、少し丸くなった背中であったり、あるいは顔に刻まれたしわや染みであったりする。若い頃は欠点のように見えるものも、長い人生を歩んできた軌跡が積み重なった証として、次第に味わい深いものへと変わっていく。
現在、大学のキャリア講義では、人生80歳までのキャリアやライフイベント、家計収支を考えるライフシミュレーション演習の教材として、映画『最高の人生の見つけ方(The Bucket List)』を活用している。余命わずかな病に直面した、背景の異なる二人が、やり残した「やりたいこと」を実践する物語である。作中で、自動車整備工のカーターを演じるモーガン・フリーマン(Morgan Freeman)の顔を見て、同じ病室の大富豪で病院経営者であるエドワード・コール役のジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)が、「いいしみをしている」と語る場面が印象的である。一般的にしみは美しさを損なうものと捉えられがちだが、そこにはその人が生きてきた時間や経験が刻み込まれている。まさに人生の積層そのものなのである。
坂村真民の詩にも通じるが、人の価値は能力や肩書だけで決まるものではない。どのような思いで人生を歩み、日々を積み重ねてきたかが、その人の表情や言葉、人柄となって表れてくる。私自身も、年齢を重ねたときに「いい顔になった」と言われるような生き方を続けていきたいと思う。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2026年10月2日
(McKEN木鶏会のバックナンバー)
https://mcken.co.jp/category/mokkeikai/
(e-learningの情報 人事やキャリアに関する講座)
https://mcken.co.jp/e-learning/
