転職支援

ラグジュアリー業界におけるキャリアアップを考える。

コングロマリットなどラグジュアリー業界を取りまく環境は大きく変わり、そこで働く人のキャリアの積み方も変わりつつあります。

好きなブランドで働く自分を大事にするからこそ直面する壁、決断。中には自分のキャリアプランをうまく描けず、ラグジュアリー業界を去るジョブチェンジを決断する方も。でもそんなとき、ラグジュアリー業界の組織の成り立ちやキャリアの一般的な道筋を俯瞰できれば、自身の将来像の見え方も変わってきます。

ここでは、長年ラグジュアリー・ファッション業界に身を置いてきた弊社キャリアコンサルタントが、業界の組織の成り立ちや各ポジション(店舗スタッフ、セールスエキスパート、オフィス職)における実際のキャリアアップを解説します。

ラグジュアリー業界で進むコングロマリット

ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)やグッチ(Gucci)、カルティエ(Cartier)など憧れのブランドは多くありますが、これらラグジュアリーブランドは、世界中の富裕層や最先端の人々にとっても自分自身を表現するものとしての必須アイテムとなっています。

一方でラグジュアリー業界は、グローバルなレベルでのビジネスとしての側面を強く持っています。いわゆるコングロマリット(複合企業体とも呼ばれる企業戦略)としてのビジネスグループの側面です。

このコングロマリット戦略は、投資としての側面と同時に、ブランドの価値を相乗的に高めるためのビジネス戦略としても進められてきました。そして現在、Louis Vuittonを中心としたLVMH、Cartierを代表とするRichemont(リシュモン)、GucciなどのKering(ケリング)の三大グループを中心に世界の高級品市場を席捲しています。各ラグジュアリーグループの中でもブランドの売買などにより、現在も新陳代謝が続いています。

 

世界三大ブランドの図

 

 

ラグジュアリー業界でのキャリアアップの現状について

このような背景にあって、ラグジュアリー業界で働く人にとって、そのキャリアアップの状況も変わりつつあります。

そのため、外資系のラグジュアリー業界、リテールビジネス業界において自身のキャリアをどう重ねていくかを考える上で、業界における基本的な組織の成り立ちとポジション、役割についてあらかじめ理解しておくことは大事です。

リテールビジネスにおいては、会社全体の(ヒト・モノ・金)を管理する各部署の集合体であるオフィスと、セールスの現場で(ヒト・モノ・カネ)を管理する各店舗の2つのステージがあり、その方のキャリアがどこからスタートしているのかによって道筋が決まるケースがほとんどだからです。

例えば、下記のようにセールスアソシエイト(店舗セールススタッフ)としてこの業界に入った場合は、セールスの知識やスキルを蓄積し発揮することができるステップを踏む事になります。その後、大勢を率いて効率的にマネジメントできる方、少人数のメンバーをアットホームにまとめプレイングマネージャーとして見本を見せられる方など、キャリアアップを進めていくことになります。

下図にしたがって、店舗スタッフ、セールスエキスパートの一般的なキャリアアップについて整理してみます。

 

ラグジュアリー業界での代表的なキャリアアップ

 

店舗スタッフのキャリアアップ

店舗スタッフのキャリアアップは以下のケースが一般的です。

 

店舗スタッフ1(セールススタッフ・セールスアソシエイト)

店舗スタッフ2(シニアセールススタッフ・スペシャリスト)

店舗マネジメント1(アシスタントマネージャー カテゴリーマネージャー等)

店舗マネジメント2(ストアマネージャー ・ストアディレクター等)

複数店舗・地域統括マネジメント(リテールマネージャー・スーパーバイザー)

統括マネジメント(シニアリテールマネージャー・リテールダイレクター)

 

セールスエキスパート

顧客構築や売上に特化したセールス職を極める方(セールスエキスパート)もいます。セールスエキスパートは店舗スタッフから入るのが通常ですが、マネージャーから入る場合もあります。

 

オフィス職

オフィス職は専門職の集合体で、経験を3〜5年のタームで積みながら、同じ職務で(アシスタント)→(マネージャー)→(ダイレクター)とステップアップするのが通常です。

 

外資系のラグジュアリーブランドの特徴

企業規模が比較的小規模で事業展開しているブランドは、複数の専門職を包含して担う場合もあります。特に外資系のラグジュアリーブランドでは、語学力が必須となります。一般的な会話能力というより、ビジネス英語のレベルを求められます。TOEICのスコアも考慮の対象になりますが、それ以上に実務で英語の活用実績度が重要な要素となります。コミュニケーションとしての英語力に加えて、各ブランドのコミュニケーションの仕組みとして本国本社とのやり取りの立ち位置や距離感、責任分担の理解が適切にされているかどうかが問われることになります。日系のブランドは本社機能になりますが、外資ラグジュアリーブランドでは、日本でのオペレーションはローカル機能になります。ここでのマーケティング、MD、VMD、PR、ロレーニングなどの機能部門に求められる人材要件は、日系企業で求められる要件と異なることの理解が大切です。

 

キャリアアップに求められる「一貫性」

このように、キャリアの積み方はそれぞれですが、その方が持ち合わせている能力のどの部分が秀でているのかを自分自身はもちろん、周囲の意見も参考にして、キャリアを選択することが重要です。

またキャリアアップの過程で転職を経ることもあるかと思いますが、店舗職・オフィス職に限らず、ラグジュアリー業界で重視されるのは、その方の職務履歴に一貫性があるかどうかです。取扱う製品の種類(アパレル・シューズ・宝飾品など)や価格帯・顧客層・規模感が一貫しており、その道で極めている事は転職の際に大きく評価され、スムーズなステップアップの要因となります。

*例外として、店舗スタッフやマネージャーがリテール部署以外のオフィス職にジョブチェンジされる場合もあります。

 

ここまで、ラグジュアリー業界を取りまく環境の変化と、キャリアアップの代表的なキャリアパスのパターンについて解説しました。また、職務履歴に一貫性があるかどうかが転職やキャリアアップに大切であることもご説明しました。

では次に、ラグジュアリー業界におけるキャリアアップで気になるファクター(転職を考える多くの人が共通して持つ悩み。選考面接時にどのような影響を与えるのか気になっている要素)について解説します。

年齢

ラグジュアリーブランドは、今までのスタイルを大事にする一方で新しい風を歓迎しています。店舗の運営には若いスタッフから経験豊富なマネジメントまでのバランスが大事です。ポテンシャル重視で若い人を採用する時もあれば、店長ポジションを探している場合もあります。

したがいまして、ご自身で可能性を絞らずに、幅広くご自分のキャリアプランを経験のあるキャリアコンサルタント、キャリアエージェントにご相談されることをお勧めいたします。

そのブランドならではの伝統やこだわり、カルチャーを正しく理解し、日々の仕事を通じてそれらを日本マーケットにおいて具現化していくには時間がかかります。会社側もスタッフが長く働くことを期待していますので、1~2年など短期的な期間での転職を繰り返すことは、投資対効果の観点での人材マネジメントの視点からも、ご本人の仕事に向き合う基本的な姿勢の観点からも選考において留意事項(不利な部分)となることを知っておいてもらいたいと思います。。

出産

元々、男女平等が基本の外資系企業では、女性が働きやすい職場作りは当然のことです。また、グローバルな視点で、欧米各国との比較の中で女性の活用・活躍を考えているのも外資系企業の特徴です。

特に販売職は女性が多く活躍している仕事です。店頭の皆さんが、日々成長し、モチベーション高く働き続ける環境作りはブランドの発展に不可欠なため、外資系のラグジュアリー業界では産休・育休の環境が整っています。

法律で定められている以上の育児短時間勤務制度を備えている会社も多く有り、また店頭の現場においても、産休・育休を終えて復職してくるスタッフも多く、長く活躍されています。社内のコンプライアンスもしっかりしている企業が多いのも特徴です。

語学力

職務やポジションによって多少異なりますが、語学力を磨くことはキャリアアップにとって大きくプラスになります。ビジネスレベルの語学力を身に付けることをおすすめします。今はYOUTUBEやスマホのアプリなどでも語学を学べる時代ですので、ご自身に合うツールをチャレンジしてみるのもいいかもしれません。

キャリアデザイン、好きなブランドで働く自分像。

自分の好きなブランドやデザイナーのお店で働きたい、そしてその世界観をお客様にお伝えしたいという気持ちは、ブランドやファッション業界で働く人にとって、とても大切なモチベーションです。

そのための努力を重ねているうちに、販売職のエキスパートになっていく方もいれば、店舗運営のマネジメント職のキャリアを積んでいく方もいます。

また、そうしたキャリアの中で、今まで働いていたブランドのデザイナーが変わったり、ブランドイメージが変わり、顧客ターゲット自体が変わることもあります。そうした変化の中で、ご自分のスキルと立ち位置を見つめ直して、引き続きそのブランドで働き続けるべきか、新たな働き場所を求めて転職するべきか、悩む時期も出てきます。

しかしそんなときでも大切なことは、努力を怠らず、販売職としてのスキルと経験を積むことです。

外資系の有名ブランドは数多くあります。それぞれブランドイメージやターゲット顧客も異なります。そのため、常に自分の市場価値を高めていれば、同じブランドで長く働きキャリアを積んでいくことも、タイミングを見て違うブランドに転職することも可能です。

オフィス職を目指す方、オフィス職の中でキャリアアップを考えられている方にとっても、上述の実践力としての経験が求められます。一朝一夕に身に着くものではありませんが、長期的な計画の中でその機会を得られるように準備することが大事です。

また、日本における外資系ラグジュアリーブランドのコミュニティは、比較的小さな世界です。この業界で働く販売職の方もオフィス職の方も、共通の知人を通じて人柄などを知る機会も多くなります。日頃の働きぶりは、どのブランドに行くにしても大切なキャリアを裏付け、その方の信頼性につながります。

もし、ご自身が転職に伴う退職をする時にも、その最後の一日までお世話になったブランドと職場に丁寧に向き合い卒業していくことをおすすめします。

 

 

以上、ラグジュアリー業界でキャリアアップを考えるとき、多くの人が共通して持つ悩みを「年齢」、「出産」、「語学力」、「好きなブランドで働く自分像」の切り口で解説してきました。

 

転職するしないは別として、自分の市場価値やキャリアに向き合うこと、そして「好きなブランドで働く自分像」を具体的に思い描くこと、これこそ私たちキャリアコンサルタントが転職希望者の心に引き起こしたい変化です。

素敵なキャリアの積み上げのため、長期的なキャリアのシナリオをコンサルタントといっしょに設計してみるのも手です。転職に限らず、キャリアプランについてお悩みの方は弊社に是非ご相談ください。

関連記事

新着コラム

  1. 中小企業の人的資本経営について その9

  2. 中小企業の人的資本経営について その8

  3. 新社会人へのメッセージ 2024年

PAGE TOP