転職支援

HR Letter〜人事部通信。

働き方革命 職務給の行方

今朝の表参道周辺の空は小雨が降り、厚い雲に覆われている。

働き方改革の議論が佳境にきている。労働時間及び賃金の観点から働き手に対して何を基準に労働対価としての報酬を配分するかが議論の根幹になる。日本の賃金体系は、戦後GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により「職務給」を軸に展開されたが、次第に官僚機構および企業経営者の現場の現実的な対応により「職能給」に収斂された。「職務給」は仕事の価値に対し、「職能給」は人の価値に対し賃金が配分される。

戦後の混乱から急激な経済成長にシフトする企業現場では、働き手を仕事に固定的に拘束する可能性が高い色彩をもつ職務給的な管理では仕事がまわらず、頻繁な職種転換や異動に対応できる人に対して賃金を付帯させる「職能給」の方が理にかなっていた。企業成長のスピードに合った合理的な体系であった。
一方で仕事の標準化や基準化の概念は薄れる。やるべきことは「人」の裁量に大きく委ねられる。

製造現場の作業員から事務部門の事務員に至るまで、働き手自身の価値によって賃金が分配されるのであるから、より自己の職務遂行能力を高めたり拡大したりする動機が強くなる。労働時間が長時間になるのも自然の摂理である。そこには管理職のマネジメントが行き届きづらい。

人事を長く経験すると、賃金の配分の比重とバランスの舵取りに苦心する。働き手には常に与えられた職務の枠組みを超えて革新的な人材になってほしい反面、業務体系の秩序と企業価値に直結しない働き手の想いの強い身勝手な労働は制約したい。この匙加減は個々の企業の実情に応じて当然のごとく異なる。緻密な観察と診断に基づき、配分の調合を試みる。

都内にて

※戦後からの賃金政策の実情と推移を知るには、以下の書籍が理解を促します
『賃金とは何か—戦後日本の人事・賃金制度史 (オーラルヒストリー・シリーズ)』 単行本
楠田 丘 (著),

「副業・兼業のこれから」

今朝の仙台は曇り空、低く白く靄のような空気に覆われている。

人事労務関係に詳しい弁護士の友人と食事した会話で、副業・兼業についての話題になった。厚生労働省のモデル就業規則が昨年(2017年)10月20日に改正(下記参照)され、副業・兼業に関してのモデル就業規則にある「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」が削除され、「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」と変更された。

話が一気に楽しく盛り上がったのは、時間管理と制限条項の適応性の妥当性である。時間外賃金の対象は複数の仕事であっても通算され適用され、どちらの事業主がその支払い義務を負うのかなど判断に迷う。また制限項目の社会通念上の判断が入る。

働く人にとって収入源としての複数化とキャリア形成の多様化によって、個人としての環境変化対応力を計画的段階的に習得していく選択肢の拡大欲求は今後も続いく。その為の個人の主体的な職業選択判断が可能な雇用インフラの整備の充実も大切な視点である。雇用主にとっても生産労働人口が低減する中で、働く人のモチベーションをより自社の向けてもらい人材獲得競争力の最大化の取り組みが迫られる。

基本的な枠組みは大切だが、過度な職務定義の明確化や制度設計の詳細化のブラックホールに入ると双方にとって窮屈だ。最終的には、「働く人」も「雇用主・人事担当」も相手の視点にたって、相互の信頼を損なわない倫理観に基づき折り合いをつけていくことが求められる。

仙台にて

(副業・兼業) 厚生労働省 「モデル就業規則」より抜粋

第67条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
㈰ 労務提供上の支障がある場合
㈪ 企業秘密が漏洩する場合
㈫ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
㈬ 競業により、企業の利益を害する場合

賃金テーブル 3分割の魔法

今朝の仙台は曇り空です。

社外取締役をしている会社の賃金体系の再構築を相談され策定している。規模が小さな企業で対象社員は正規社員より、パート社員やアルバイトが主である。せっかくの機会、一つの賃金テーブルですべて包含する形態にしてみた。今回は、職務給的な枠組みを基本として、9の職務グレードを3階層(見習い・一人前・指導者)で区分けした給与レンジで設定。合計で27ブロック。9つの職務グレードも3分割して、スタッフ層、リーダー層、マネジメント層に分割。正社員のテーブルは月給制なので別テーブルだが、パート・アルバイト社員との連動性もとってみる。

大学の恩師が、人間の評価はだいたい3分割で区分けするのが生理的になじみやすいと話していたことを思い出す。「見習い・一人前・指導者」や「上出来・並み・今一歩」、この区分けであれば、冗長な職能記述書や詳細だが、あいまいな評価基準の言葉の迷走の谷底に落ち込まなくても済むのだと。簡潔で手離れがいい仕組みが職場での運用はしやすい。

久しぶりに賃金表を作成していて、楽しんでいる自分に、やはり自分は、生涯人事屋なのだと感じる。

大学の講義で賃金表をチームごとに考えさせてみたいという衝動に駆られる。留学生が作成する賃金テーブル。是非やってみよう。きっと楽しいだろう。

仙台にて

終身雇用

日本的経営の三種の神器の一つです。馴染みがある言葉ですが、意外にその語感がもつ印象が経営者だけでなく、働く方にも刻印されました。

語源は、経営研究者のジェイムズ・アベグレン氏によります。 1958年の著書で日本の雇用慣行を「lifetime commitment」と名付けました。 日本語訳版で「終身の関係」と訳され、 これから終身雇用制と呼ばれるようになりました。なお、アベグレンの原文は “permanent employment system”です。

人事的には、より長期の雇用関係のメッセージを社員に送り続けることにより、将来の昇給や昇進、キャリアの拡大の可能性を感じさせ、離職率を低下させる効果がありました。現在価値での給与水準を低位に抑えて、モチベーションを高める施策の一つでもあります。離職に関して、日本特有の離職に罪悪感をもつようになったのもこの語源、語感の影響が大きいのかと思います。

長期雇用の期待の企業の基本姿勢は今も変わりません。ただ、対象を選別し始めたのが大きな変化点だと思います。現在もコア(基幹)社員には、低コストで、高モチベーションを維持したい終身雇用的な関係を求め続けています。

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