目白からの便り

環境変化に向き合う姿勢 古からのメッセージ

暦の上でも立夏を過ぎ、夏に向けて、新緑の勢いと、農家では、田植えや種まきなどの畑仕事が本格化している。環境に不自由さを感じつつも、夏の日が持つエネルギーの高まりは、素直に取り入れたい。

今週、ある方との会話の中で興味深いことが話題となった。日本には神社や寺院に参拝する際に心身を清めるための習いに、手水舎(ちょうずしゃ)で手を洗い、柄杓に直接口をつけず、手で受けて、口に水を含みすすぎ、再び手を清める。最後に手で触れた柄杓(ひしゃく)の持ち手の柄に水を洗い流し清める。

神殿の前でも、深く頭を下げ、それぞれの想いの願掛けや願いのお礼を言葉を発せず、心の中で静かに唱える。こうした長い歴史の中で続く慣習は、かつての疫病対策の古の人たちの知恵の中から生まれてきたのであり、そうした記述が古書などにも記載されているのだと。諸作法の背景には様々な説もあるのだと思うが、私には自然に腑に落ちる。

企業や組織におけるルールや規則の中でも特有な所作に出会うことが多々ある。それらは、何らかの事柄や想いに対する防護的、積極的な行為を促すためのメッセージでもある。私たちがルールや規則、仕事の進め方の慣習などを見直す時に留意しなければいけないことは、そうした過去から受け継いできた仕組みや慣習の背景にある先達の方々の工夫や格闘の事実や教訓を正しく理解し、未来の人たちに伝わりやすい言葉で翻訳し直す努力を疎かにしないことである。「変化の送り手」にとっても、「変化の受け手」にとっても、先達からの価値の連鎖に基づく積み重ねがないと、その言葉は空虚になり、関係は脆弱になる。身になっていない借り物の言葉は避けることだ。

世界中を席巻している出来事は、私たちの意識や行動の変化を促すであろう。そうした中でも、今を保護的に考えるだけでなく、将来に向けて、この機会をより有効に発展的に考える姿勢が、「組織にとっての経営戦略」、また「個人の自己研鑽や働き方」にとって大切だと思う。人間的な関係や、価値を創出するプロセスにおいて、新しい情報伝達やコミュニケーションの変化を次の成長に向けて取り込む大切な機会であると積極的に評価し、それらが持つ本質的な価値を考え抜き、新しい価値に昇華していくことが必要なのだと思う。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。今向き合っている困難を克服する取り組みに灯りがともりますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

2020年5月22日  竹内上人

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