目白からの便り

留学生の就活 選ばれる側ではなく選ぶ側でもある

4月から始まった新学期の講義で多くの留学生が日本の就職活動についての難しさを訴える。日本で学ぶ留学生にとって、日本の企業で働くことの壁は相当高い。新卒で同時期に同じプロセスで一斉に活動することに馴染めないこと、また公表されている選考スケジュールと実際とが大きく乖離していることも戸惑いを増幅させる。特に難敵なのはWEBによる適性検査と企業へ送るエントリーシートである。日本語の壁があり時間内に適性検査をやり遂げることに頭を悩ませる。本当に自分の書いたエントリーシートを志望企業の人事の人たちは読んでくれるのであろうかという不安も積み重なる。最近ではChatGPTというAIを使って文章を生成したり、回答に答えたりできるしくみなどの補助機能も登場し、今後、採用担当者と学生の攻防もより激化していくのであろう。AIに関しては、気づかないうちに私達の生活にも浸透してきている。NHKのニュース見ていると、かなり滑らかな日本語で、AI自動音声をつかっていることに気づく。その画面右上の通知を見なければ、実際にアナウンサーの方が話している語感と相違を感じさせないほどナチュラルである。

日本企業が留学生採用を積極的に取り組めない理由は3つある。ひとつ目は過去の経験から短期で離職してしまうという恐れである。人事担当者、それ以上に配属先職場の職制は、3年から5年という短い期間で退職することに対する費用対効果が伴わないと感じ躊躇する。2つ目は、企業内の社内システムやマネジメントの仕組みが日本語仕様であり、英語化など多言語化するためのコストをかける余力をもてないという現場の消極的な悩みである。改定の保守を怠ると日本語と英語版のダブルスタンダードが並立しかねない。そして3つ目は、留学生は組織としてのメンバーシップ行動、協業行動に適合しないという誤った前提認識である。というより日本の伝統的な管理職のマネジメント力の限界の嘆きでもあるのかもしれない。そして、人事担当者は多様化の取り組みに積極的な意識を持ちつつも、配属先職場からの都合の良い要望に一貫して弱腰でもある。

多様な人材を動機付け、組織の目標に向かって適切にマネジメントすることは、組織の力量でもある。その卓越性を持つ組織は留学生だけではなく、女性や障害者の活用も極めて柔軟に受け入れ活用できる組織であり、それ以上に高度に熟成された優秀人材の共感を誘発するであろう。絶対的な生産人口が減少する日本において労働力を長期にわたって確保することは高度な経営課題でもある。

就活に直面し、必死にもがく留学生の質問を聞き続け、対処療法を話す自分自身の言葉が現状を肯定した上での表面的な対応を学生に求めているのではないかという罪悪感をもつ。留学生にとって大切な事は、自分たちが選ばれると言う意識を持つだけでなく、自分たちにとって将来的なキャリアパスを描ける良質な変化対応力を許容する企業や組織、仲間を選ぶ側にあるということをも認識してもらうことである。そこから自分を取り戻した信念に基づく主体的な就職活動が始まる。留学生と一緒にそうした企業を選ぶ支援と仕組みづくりができればと願う。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2023年4月21日  竹内上人

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