目白からの便り

新社会人へのメッセージ 2023年

「少年であることの条件、それは純粋であること
未知なるものへの好奇心、実現に向けてのあくなき希求
私たちは開発型企業として、少年の心をビジネスの基本においています。」

このフレーズは、私が大学を卒業し、23歳の時、会社員として最初に仕事らしい仕事をした会社案内の冒頭に掲載した文章である。年齢を重ねていくと、好奇心のエネルギーそのものが低下する。それは、年齢を重ねても持ち続けることができるのか。この文章を読み返すたびに自分自身に問い直す。

今年のSUNTORYの4月3日の入社式に合わせた伊集院静さんの文章は、「ハチャメチャでもかまわない、挑む人になれ」であった。

『 私たちは男女の格差などない、学歴偏重のないスタートラインを引いて君たちを待っています…(中略)…社会も会社も変化を望んでいるんだ。そのために挑む人になれ、少々ハチャメチャだって構わない。そういう姿勢が大切なんだ。 地位や名声や金儲けだけや目標じゃダメだ。君の歩む道には光が残る。光る軌跡が見える。その道が追い風とむかい風なら、断然向かい風を選べ。 苦しいこと辛いことを知ることは君に力を与える。変える力を手に入れろ。力を持つための勇気を掴め。』(日経新聞より引用)

人事評価の制度設計で私が企業の人事担当者に問いかける次の5段階の評価・査定基準がある。3番目の基準と4番目の基準のどちらを上位の評価にしますか?という問いである。

  • 高い目標を掲げチャレンジし、期待を上回る成果を挙げた
  • 高い目標を掲げチャレンジし、目標を達成した
  • 高い目標を掲げチャレンジし、目標に届かなかった
  • 基準の目標を設定し、目標を達成した
  • 基準の目標を設定し、目標に届かなかった

意見も分かれるのであろう。私は断然、3)の人材を4)より評価することを勧める。日本企業におけるMBO(目標管理制度)が、処遇評価に連動しすぎてしまい社員の伸びやかさに躊躇を促してしまう状況を危惧するとともに、人事制度というものは、緻密で公平的な視点と同様、企業文化を醸成するコミュニケーションメディアであるからだと感じているからである。そこには、経営の社員に対する期待と希望が入るべきだと思う。

私が入社した1986年の「新入社員 諸君」の激励文は、「ゆっくりゆっくり」というものだった。その当時は山口瞳さんが執筆していた。そこには、長いサラーリーマン人生、ヒットも打つこともあるし、エラーもすることもあるが、お酒の一気飲みのようなことはせず、君たち、目の前の仕事に関心を持ち、落ち着いて、着実にやるものだ・・ということが書かれ、不器用な自分には励みになった。今でも失敗の数は限りなく後悔を重ねる。そうした時に、「エラーをしてもヒットも打つこともある」というフレーズは心の支えになっている。大切なことは、地道な練習を怠らないことであり、諦めずに試合に出ようとする意思を持ち続けることだと。

仕事において転機を迎える方が多い時期でもある。私がキャリアの支援した方、関わった方たちも新しい挑戦に向き合っている。新しいそれぞれの職場で、緊張の中、息を整えている鼓動が伝わってくる。

どうか、心配しないでほしい、純粋な気持ちで、人や仕事と向き合い前向きに挑み続ける姿勢は、新社会人でも、経験を積んだ方でも、きっと強力な賛同者や応援者も現れるはずだ。40年間、人事の仕事をしてきてその法則はゆらぎがないものであるから。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2023年4月7日  竹内上人

 

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