目白からの便り

成績表と人事評価の設計

ここ数日、松本は涼しい気温に包まれている。毎年お盆休みを過ぎると朝夕の気温が一気に下がる。ポロシャツでいると冷気が身体に染み込んでくる。

夏休みの時期の松本駅は、帰省する人に交じって、登山の身支度をした人で溢れかえる。これから山登りだという挑戦者としての風貌を携えて、意気揚々と改札を出る。彼らにとって、松本駅の改札は出口ではなく、北アルプスの登山口でもあり、入り口なのだ。上高地から涸沢を経て穂高や槍に登るのか、燕岳から、常念に向け、表銀座を縦走するのか、それぞれ、綿密に立てた登山計画で彼らの表情は期待で溢れている。この時期まで登山の計画が立てられなかった自分にとっては羨望の姿である。

この夏休みの時期、授業をもっている2つの大学の春期(前期)課程の採点に頭を悩ませる。履修学生の構成は、約4分の3が留学生である。妻は高校教諭なので、採点や通知表づくりに悪戦苦闘する様子を無責任に眺めていたが、いざ自分が担当すると難しい。

会社の人事評価も同じだが、人に対して定量的・定性的に評価をする難しさを痛感する。出席率は、数値化されているデータだが、出席率が高ければよいのかと、そうではない。できるだけ多面的に評価を心掛けたい。しかし、客観的な評価のプロセスの精度を高めるだけでいいのかという漠然とした悩みが取り除けない。なぜ評価をするのか、何を評価項目とすべきか、どのような評価プロセスを取り入れるべきかのイメージが難しい。

一方で会社の人事評価はその答えが明快である。会社の評価の人事的な狙いは組織目標に適合する人材を長期的に育成、誘導することにその重きが置かれている。公平感(fairness)は組織倫理の観点から外せない視点だが、それ以上に賃金体系の設計やその運用の意図の拠り所は長期的な事業戦略の実現に寄与する人的資源開発におかれている。また組織価値やブランドのクオリティを維持する企業理念の実践者を励まし続けるところにある。

ここまで書きながら、気がついた。日本の伝統的な企業で長年にわたり人事屋として実務を担っていた自分の大学における提供価値は、将来、日本の組織に多数入り込んでいく学生が、どうすれば組織適合能力を身につけることができるのかという命題に対して、授業設計を行い、その習得度を評価に内在化させていくことなのだと。日中の暑さで燃焼不良をおこしつつあった後期の授業設計に取り組むモチベーションも喚起された。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2022年8月26日  竹内上人

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