目白からの便り

レコードに気づかされるキャリア設計の構造

この長期休暇に入るころNHKのthe Coversでユーミン・ナイトというタイトルの番組を観る機会があった。私と同じ世代では荒井由実の時代から影響を受けた人も多いのかと思う。

「MISSLIM /YUMI ARAI 」と記されている古いレコードのジャケット。荒井由実 2枚目のアルバムである。1974年、今から46年前のレコード。アナログの音感を感じながら、その歌詞の新鮮さに驚く。さらに驚嘆したのは作詞作曲をした本人の年齢が18歳であるということだ。時代の変化を越えて、彼女の持つ本質的なメッセージは私の弛緩しきってしまった感情に強烈に突き刺さる。と同時に彼女の最初のデビューシングルの「返事はいらない」は、その2年前の1972年、16歳からの本格的なキャリアのスタートにも刺激を受ける。

キャリアもその核となるところは半世紀前の時代でも、今でも大きく変わることがないのであろう。働き方のバリエーションは確かに変化をしているが仕事に対して人が持つ感情は今も昔も変わらない。同様に人事制度改革に関わるファッショナブル(流行的)な言葉や改革論議が飛び交っても、人的資源管理の本質は変わらない。それは、働く人たちが所属する組織の指揮官や同僚との信頼関係、自らの職務に精勤努力することを自分の成長として前向き感じ取れる感覚を肯定する就労環境であり就労ルールの良質性に起因する。流行する言葉の裏側にある背景を冷静に読解する力が私たちに求められる。慌てて表面的な対応をしないことが肝要だ。制度やルールを変えなくても現在の制度やルールの価値をもう一度紐解き丁寧に読解し、運用の可能性を探りきることによって突破口が開けることが多い。

レコードを聴いて感じた事がある。曲を気ままに飛ばして聞いたりすることができないことだ。レコード自体の曲の組み立てに物語がある。この組み立てにより作者のメッセージをより端的に聴き手に伝える。このことは一人ひとりのキャリアの履歴にも同じことがいえる。自分自身のたどってきた職務上の履歴をもう一度振り返ってみると、これから取り組むべき到着点を読み取れる。ある著名な経営学者がぽつりと言った言葉が今でも脳裏を離れない『戦略は過去の延長線上にある』

学生であっても経験を積んだ働き手であっても同じだ。キャリア設計の基本的な考え方は過去の冷静な歩みの振り返りにあり、そこからその根底に流れている自分自身の本質的なメッセージを読み取り、次に向かっての曲目を決める作業の繰り返しなのだ。デジタルに麻痺した感性を覚醒するには、時にはアナログに触れることも貴重である。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2022年5月6日  竹内上人

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