目白からの便り

新しい出発と日の名残り

10月に入り大学でも新しい学期がスタートした。私は留学生を中心とした講義の担当が多い。この10月に新しく日本の大学で学習を始める生徒も多い。まだ日本に入国できずに自分の国からオンライン講義で出席する生徒も多い。日本で初めての授業に向き合う学生たち、異国の地で、文化や慣行も異なる環境に直面して彼らはどのような気持ちでいるのであろうか。講義は7年前から続けている。「日本でのキャリアデザイン」、「EQ(心の知能指数)」、「日本的経営のしくみ」にフォーカスをあて講義を行う。こうした講座は、日本企業の雇用慣行、雇用システムの理解と、どのようにそのシステムと自分を調整していくのかを事例検討を踏まえて進めていく。

日本的経営の仕組みでは、現在進めている戦後復興期から、高度成長期までの八幡製鉄所における賃金体系の調査から、新たな気づきを促される。それは、過去の日本企業の強さの特異性としての年功賃金や終身雇用という概念に加え、またそれ以上に集団間の「競争」による巧みなマネジメントが効果的に組み込まれていたことでる。それは、業績手当的な金銭面の報酬と小集団の品質管理などの活動などの名誉的な報酬の組み合わせでもある。

最初の講義は、彼らの不安そうな顔が痛いほど感じられる。それもそうだろう、1年生は18歳~19歳なのだから、まだ高校を卒業して間がない。自分の娘とたいして変わらない年齢で、彼らにとって、精神的には世界の辺境で、学習をスタートする最初の授業であるのだから。私は、大学で講座をもつ機会で得られ身に着けたことは、講座の初期の段階は、できるだけアクティビティを伴った内容を中心に授業運営を行っている。履修する学生間での親和性を高める様々な仕掛けを身に着けた。チームビルディングがとてもその後の講座の内容を学習する上で大切であることを私自身が学習した。

コミュニケーションが成立するためには、信頼関係の構築が前提になる。いくら良質な情報をもっていても信頼関係が不在であると、コミュニケーションは成立しない。それでは、信頼関係を構築する上での前提はなにかというと、自分自身をできる限り正直に、誠実に相手にさらけ出すことから始まる。人は得体のしれないものには警戒するのが常である。となると、コミュニケ―ションの技術を身に着けるという最初のプログラムは、「自分は何者か」ということを自分自身が正しく理解し、それを第三者にどのように伝えるかという手段を学ぶことなのだ。

私自身、残りのキャリアの終盤戦、いうなればキャリアにおける夕暮れ時の最後の淡い「日の名残り」を感じながら、「自分は何者であるか」ということを自ら振り返りたい。歩んできた自分自身の道程を味わうことができることはとても豊かな時間である。不安そうに日本での生活をスタートさせた学生たちにどう笑顔を引き出そうかと思案する。自己のキャリアにおいて、できたこと、そして出来なく道半ばであることがどれほどあるか、そうした自分自身のことを誠実に生徒に届けることを思案して次の講義に臨みたい。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年10月8日  竹内上人

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