目白からの便り

成績評価と人事評価

この時期、講座をもっている2つの大学の春季課程の採点を行うことが恒例となっている。妻は高校教諭なので、採点や通知表づくりに悪戦苦闘している様子を眺めていたが、自分が担当すると難しい。
私の講義は、オンラインでの講義になるが、グループワークで様々な課題を行いながら理解を深めていくプロセスの為、よく生徒を観察しなければ、個人の評価は判断しがたいという悩みがある。会社の人事評価も同じだが、人に対して定量的・定性的に評価をする難しさを痛感する。出席率や小テストは、数値化されているデータだが、客観的な評価のプロセスの精度を高めるだけでいいのかという漠然とした悩みが取り除けない。なぜ評価をするのか、目的に合致した評価項目や評価プロセスをどのように取り入れるべきかの設計が難しい。

最近、人事制度の再設計の相談が多い。できるだけその企業ごとの実情や経緯、マネジメント層の成熟度合いに合わせた形で、「段階的に成長する人事制度」の設計を勧めている。人事屋としての経験から、評価の視点を本当にシンプルに考えると、「業績」、「能力」、「姿勢」の3つほど区分に分離するのが、落ち着きがいい。「業績」には「業績結果」と「プロセス成果(結果を出すために取り組んだ過程)」を分ける。もっと細分化をしたい衝動に駆られるが、焦らず組織に応じた、評価者と被評価者の双方の習熟段階に気配りしなければと思う。

評価に関する人事的な狙いは組織目標に適合する人材を長期的に育成、誘導することにその重きが置かれるべきだと思う。実際の職場では、個人の成果判断や,言葉を選ばず実態を述べるとすると、上司・部下の人間的組み合わせによる恣意性が残ってしまうことも現実である。しかし、多くの企業で働く人事屋の心意気は、そうした現場の実情を超えたところにある。公平感(fairness)は組織倫理の観点から外せない視点だが、それ以上に賃金体系の設計やその運用の意図の拠り所は長期的な事業戦略の実現に寄与する人的資源開発にある。また組織価値や企業ブランドのクオリティを高めるそれぞれの持ち場での「真摯な実践者」を励まし続けるところにある。そして、人事には、将来に向かっての明るく、可能性を感じるメッセージが織り込まれなければならない。

企業で長年にわたり人事屋として実務を担っていた自分の大学における提供価値は、日本の組織にこれから参入する学生達が、どうすれば組織適合能力を身につけ、ひとり一人が活き活きと活躍できるのかという命題に対して、授業設計を行い、その習得度を評価体系に内在化させていくことにその答えがあるのだと思う。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年8月20日  竹内上人

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