早朝の松本はとても涼しい空気に包まれる。うす青く、いくつかの薄い雲が横たわる。この週報を書き上げる早朝の時間は、過ごしやすく朝の散歩の途中ベンチに腰掛け、原稿の下書きを眺め文字の並びの組み合わせに思案を重ねる。お盆を過ぎると朝夕は秋の気配を感じるのはいつもの年と変わらない。
今年の夏はコロナ禍の影響で大学の講義の日程も内容も例年と異なり大きく変化した。オンラインを中心とした対面ではあるがインターネットを通じた形式への授業構成の変化は自分自身にとっても様々な気づきを得ることができた機会でもある。後期もすべての大学でオンライン講義に移行する気配の中、幸運にも今週と来週にかけて、信州大学で夏季集中講座の機会を頂く。「実務家からみた経営学」と題し、経営の講座をオンラインではなく、リアルな現場でできるのが嬉しい。長野県内の経営者の方をゲストスピーカーでお呼びし、ご自身の経営哲学や持論にについて率直に語ってもらう。私が学生だったら、履修したかった講義の形態を経法学部の学部長の先生と相談しながら構成する。
私の講義は通常、講義やゲストスピーカーのインプットに基づき、少人数でのグループワークを通じて学生自らが、学生相互の意見交換や、全体共有を通じて課題の理解を深めていく。オンラインであってもリアルな講義であっても、その分、それぞれのプロセスを通じてよく生徒を観察しなければ、個人の評価は判断しがたいという悩みがある。会社の人事評価も同じだが、人に対して定量的・定性的に評価をする難しさを痛感する。出席率や小テストは、数値化されているデータだが客観的な評価のプロセスの精度を高めるだけでいいのかという漠然とした悩みが取り除けない。なぜ評価をするのか、目的に合致した評価項目や評価プロセスをどのように取り入れるべきかの設計が難しい。
一方で会社の人事評価はその答えが明快である。会社の評価の人事的な狙いは組織目標に適合する人材を長期的に育成、誘導することにその重きが置かれている。実際の職場では、個人の成果判断や,言葉を選ばず実態を述べるとすると、上司部下の人間的組み合わせによる恣意性が残ってしまうことも現実である。しかし、多くの企業で働く人事屋の心意気は、そうした現場の実情を超えたところにある。公平感(fairness)は組織倫理の観点から外せない視点だが、それ以上に賃金体系の設計やその運用の意図の拠り所は長期的な事業戦略の実現に寄与する人的資源開発にある。また組織価値や企業ブランドのクオリティを高める実践者を励まし続けるところにある。人事には、将来に向かってのメッセージが織り込まれなければならない。
企業で長年にわたり人事屋として実務を担っていた自分の大学における提供価値は、組織にこれから参入する学生達が、どうすれば組織適合能力を身につけ、ひとり一人が活き活きと活躍できるのかという命題に対して、授業設計を行い、その習得度を評価体系に内在化させていくことにその答えがあるのだと思う。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2020年8月21日 竹内上人