キャリアの作り方

経営者、管理監督者のキャリア意識の有効性

早朝の松本は薄い雲に覆われ、少し肌寒さも感じる。日中の気温は高くなりそうであるが、朝はまだその予兆を感じさせない。

キャリアコンサルティングを長年、研究・指導している方とお話しする機会があり、人事の領域に事実やデータを記録し、変化を分析するといった「サイエンス(科学)」の感覚が定着しない背景についての話題となった。経営者も人事責任者も人や組織に関して「情」の観点が強く働き、数値的分析の重要性にたどりつかないことが多い。総額人件費管理や要員構造分析の観点から職種別、事業別の人員構成を試算することは受け入れやすいのだが、個々の人材がどの程度のモチベーションで組織に貢献しているかという課題になると、解決策の出口を失ってしまうのではないかとためらう。

ものづくりや優れたサービス提供に対して定評がある日本的品質管理ではあるが、「ヒト」の領域になるとその精彩さを急激に曇らせてしまう。人事の役割としてデータや事実を収集し、それらをいくつかの視点で分析をし、その背景にある要因分析を行う。ここまではなんとかたどり着く。厄介なのはその先である。経営計画の動きと連動した人事施策に翻訳し直せるかという課題と、継続的にその人事データを読み解き、時系列変化を追い続ける持続力である。組織の大小は問わず、働き手の就労意識の変化は職場のいたるところで起こっている。その予兆や微細な救難信号をどれだけ鋭敏な感性で嗅ぎ分け、その処方箋を正しく描き、組織を巻き込んで展開できるかということが問われる。

丁寧な事実に基づいた検証と目標到達の動きとの連動性をとるプロセスは組織だけではなく、個々人のキャリア形成プロセスにも起こりうる。キャリアの最終的な責任者は自分自身であり、自己の職務遂行能力や職務遂行に関するモチベーションの状態を正しく実証的に把握し、キャリアゴールを目指す上での有効な対応策を立案し継続して実行しなければならない。

こうしたことを考えると、人事課題に対しデータに基づいた科学的な対応策たどりつかない背景のひとつとして、個々人のキャリア開発に対する科学的アプローチや向上意識の不十分さも影響しているのかとも考える。特に経営者や管理者の人たちが、自らの現状を正しく認識し、どのような将来キャリアを自らが描くのかという感性を研ぎすませることにより、その意欲や熱量が組織全体に浸透していくのだと思う。そうした環境が、人事課題に関する感度を高める。経営者、管理監督者に対する良質なキャリア設計支援やコンサルティングの必要性を改めて感じる機会となった。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2020年6月26日  竹内上人

関連記事