目白からの便り

経営者の声を聴くこと

今朝の都内は澄み渡った青空が広がり、高層ビルの窓に反射した強い朝の光が、その光量が間接的であるということ感じさせない勢いで部屋に注ぎ込んできている。渋谷駅の周辺は高層建築物が立ち並ぶようになり、朝の光を四方八方に注ぎ、街全体のもつ勢いを誇る。

大学での成績評価をつけながら、来期の事業計画を前回のシラバス(授業計画書)をベースに再構築をするうちに2月ももう残すところ数日となった。新学期からは、お世話になった先生からのご厚意で、週末を過ごす長野県松本市にある信州大学の経済と法学の学部学生を対象にした経営学の講座を新たに開講することになった。学部長の方と相談しながら、講座名も少し工夫をして「実務家からみた経営学」とした。最終講義日を試験日として合計で16コマの講座となる。

「実務家」と付記したのは、経営における基礎的な理論をできるだけ実例をベースに学生たちに伝えると同時に、いくつかの講座の間に、実際の経営に携わる経営者の方をお呼びすることにしたからである。経営の様々な場面で、「どのような風景に直面したのか」、「その時々にどう経営判断をくだしたのか」を語っていただくと同時に、それらの経営的な意思決定が並行して学んでいる経営理論とどう関連していくのかをグループ討議をベースに理解を深めていく構成にしたいと考えている。

また、経営者の方が、学校を卒業した後どのようなキャリアパスを経て今に至ったのか、その中で何を学び何をご自身の経営における、また、生き方における持論に昇華したのかについて率直な言葉でこれから実社会に出ていく学生に語りかけていただきたいと願う。お呼びする経営者の方も、グローバル経営をしている大企業の経営者の方、規模は大きくないがユニークな経営スタイルで順調に経営拡大を試みている経営者の方等を組み合わせた構成としている。

講座の最終課程では、経営とキャリアデザインのロジックを重ね合わせ、自分自身の卒業後のキャリアについて考える場を組み込みたい。理解度を確認する試験の問題作成は少し難易度が高そうだが、講義で学ぶ経営理論と、現役経営者が語る経営現場のリアルを学生自身の言葉でまとめ上げる設問としたい。

今回お願いした経営者の方は、お忙しい方ばかりなのだが、私のこの面倒な依頼を躊躇なく瞬時に肯定してくれ、協力してくれた。学生時代に私が学ばないといけないと思った事は、自然科学でも社会科学でも、科学として成立するために避けて通ることができない地道な、骨の折れる事実に基づいた実証的な作業を通じて見えてくる真実の希求と、理論や理屈を超えてしまう人間のリアルな生き様に触発される純粋さの両方のバランス感覚を持つことの大切である。

国の最高責任者であれ、規模の大小を問わず組織や社会の上位にいる者による意思決定は、その本人にとっても限りなく重く感じるはずである。ただ明らかなことは、意思決定はトップの判断の正誤や品質の問題だけでなく、組織がそれをどのように受け入れ、起こりうる弊害を最小化し、全体最適での調和を良心的に行うことができるか否かにある。その意味で、「リーダーシップ」だけでなく、信頼に基づく「フォロワーシップ」の存在が欠かせない。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

表参道にて 竹内上人

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