目白からの便り

企業内キャリアコンサルティングの価値

今朝の名古屋周辺の空気は、肌に心地よい冷たさである。週末を迎える松本のような冷気は感じられないので、私にとっての名古屋の朝は暖かいと感じるのであろう。今年の冬は例年になく温かい。

連用日記に挟んである新聞の切り抜きが目に留まる。以前にもこの週報で紹介したことがある京都のお線香を家業とするお店の家訓である。

 『細く 長く 曲がることなく いつも くすくす くすぶって あまねく 広く 世の中に』
(京都 松栄堂 家訓)

家訓であるから、その家の家業をどのようにマネジメントしていくかを、先代が後世の継承者に戒めをもって伝えたい言葉なのであろう。

それ以来、この言葉が、「働く人」のキャリアの在り方と重ね合わせられる。昨年から始めた学習院大学の経営総論の講座でも、段階的に経営理論を学びながら、個人のキャリアの考え方と重ねて解説する。経営戦略の設計プロセスとキャリアデザインの設計プロセスは極めて類似している。

先日、キャリア理論の専門家の方との話を通じて、企業におけるキャリアコンサルティングの価値を再確認する機会があった。厚生労働省は、働き方改革の施策の一つとして、「企業内キャリアコンサルティング」の導入を推進している。キャリアコンサルティングとは、働く人のキャリア形成や職業能力開発の助言や指導の役割を担う。

私は、ひとり一人のキャリアの設計も、企業の戦略策定の描き方と類似性があると考える。正しい経営戦略を有している会社は、市場から求められ続けられ、社会に不可欠な価値を提供し続ける。当然のことながら組織のモチベーションも高く、働く人たちの職業倫理も高い。

個人が向き合うキャリアの設計図も同じようなことがいえる。極言すれば正しい手順と描き方で、キャリアデザインという自分自身の職業計画書を策定し、日常管理のプロセスで自己マネジメントを適切に行えば誰でも社会にとって、所属する組織にとって、より頼りにされる卓越した人材になる。これは、持って生まれた素質ではなく、習得できる技能なのである。企業内で経営を担う人材が、経営戦略を考えると同様、キャリア設計の方法を重ねて考え、社員への伝授する試みは、企業経営にとっても重要な価値に昇華する。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

名古屋にて 竹内上人

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