目白からの便り

思いがけない苦難に向き合う時

今週に入り、急に気温も下がり、松本市の自宅では、早々にストーブを焚く。ついこの間まで暑さをどのようにしのぐのかと思案していたことを思い戸惑う。今朝の都内は天気も崩れ、小雨が舞い路面が濡れている。

今週は、自宅のある松本駅から新宿駅をつなぐJR中央線の復旧工事が長引き運転再開の目処が立たないので、篠ノ井線で松本駅から長野駅回りで都内に向かうことにした。ローカル線のタッタッタと定期的に刻む金属音が心地よい振動とともに体内に染み込んでくる。時々、パーンという高音の警笛を鳴らす。特急列車と異なる感覚に揺られ、もちろん電化された列車なのだが、あたかも汽車に乗っているような感覚を受ける。

途中の車窓の景色は確実に秋を感じさせる鮮やかな色合いが山間部の山あいを染める。このまま、途中下車をしたくなる誘惑に駆られる。田毎の月で知られる姨捨の駅を通り過ぎる。篠ノ井線では千曲川を眼下に見下ろす高い位置にあり、今もスイッチバック方式の駅舎になっている。

ここから列車に揺られ、千曲川を挟んだ善光寺平の景色を眺めていると、今回の台風の深刻な影響を重く感じる。車窓から堤防決壊の様子は伺うことができないが、千曲川の川幅いっぱいに広く黄土色に変色し、河川の畑が泥で覆われている。この近辺には報道映像で幾度も流れていた水没した北陸新幹線の車両基地もある。

抵抗できない自然災害に向き合わなくてはならないことは、自分自身も含めて等しくどの人も可能性はあるのだろう。自然災害のみならず、与えられた様々な困難とどのように対峙するか。どのように向き合うべきか、心の持ち方を考える時間を与えてもらったのだと自分自身に積極的に問い直す機会であった。

ラグビーワールドカップで来日し、台風の影響で試合が中止になり、被災地で復興支援のボランティアをしているあるカナダ選手がインタビューに答えていた。「このことはラグビーとは異なる大切なことを考えさせてくれる」。自らのためではなく、他の誰かのために感情を用いることから得られる希望を感じる。

今日一日が良い一日となりますように、大切な方を失い、深い悲しみの中にある人に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望につながりますように。

都内にて 竹内上人

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