目白からの便り

視覚化することによる動機付けとリーダーの心構え

大型の台風が近づいているので、週末の天候は本当に心配である。この原稿を書いている時間が早い時間なので、朝の天候の状態は視覚で確認できない。少し心配なのはこれから都内から伊勢に移動する予定であることだ。今回は短時間での滞在にして早めに戻ることを予定している。

10月からスタートした大学の留学生向けの秋季課程において、私の成績評価の25%は出席率にしている。毎回、「自己紹介カード」に小さな丸円のカラーシールを貼る。それぞれ、ひと学期15講座あるが、生徒のカードに毎回異なる色合いのシールが並べられていく。出席することによる小さな達成感が、学習意欲につながるモチベーションリソースになる。秋季過程ではシールをカードに張り付ける作業を本人に任せている。自分で出席のシールを貼るという単純な作業を他者に任せないことも大切な動機付け要因だと前職で学んだ。

取り組んでいることの可視化は、人間の動機喚起にポジティブな影響を与える。日本の製造業の現場には極めて巧みな「掲示物」が張られている。工場内や社員食堂に掲示されている様々な「掲示物」には、個人の業績以上に、職場工程ラインごとの歩留まり率や改善件数の実績推移、合理化効果のコストダウン額の寄与度など、本当に工夫された「掲示物」が張られている。これが作業チームや工程単位での競争意識を鼓舞するかの様に描かれている。これが日本のモノづくりの現場の優れた生産性と、品質向上のマジックなのだ。成果の認知プロセスを個人からチームへバランスよく配分することにより、組織としての良質な情報の交流を促す。

査定や昇格昇進という個人評価の反映物としての個別動機付けも大切であるが、働く仲間と工夫して、小集団の価値を高めていくことやお互いが切磋琢磨をしていく試みは、職場の秩序や倫理観、優れた組織活性化の原動力になる。

工場長や経営者、管理職のやるべきことは、そうした「掲示物」の前を通る時には、常に立ち止まり、思慮深い表情をしながら真剣に向き合う所作を欠かさないことだ。その風景は鮮明に働く人の脳裏に刻印され励まされる。

私も生徒から授業の後に返されるカードを指さし確認しながら、注意深く扱うよう心がけたい。その行為自体が、生徒の為というより、私自身が講義に向き合う意義と責任を心に刻みこむ大切な訓練の場なのである。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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