目白からの便り

次世代の人材の育成について 過去の肯定的な評価

今朝の都内は薄い雲で低く覆われている。少し前の早朝からの湿度が高い暑さは幾分和らいできた。それとともに少しずつ朝のくる時間が遅くなってくるのを感じる。

次世代の人材育成について、企業経営者の方から話を聞く機会が増えてきた。経営の補佐層というべき部門長や課長をどのように育てていくかは、経営者にとってとても気がかりでもある。

前職の人事部に在籍していた時に、次世代の経営幹部を育成するプログラムの設計と運営に5年ほどかかわった。自分自身が、経営や一個人としての経営者のあり様について、深く考える時間であった。ある時、日本で重鎮と評される経営学者との会話の中で、深く脳裏に刻印された言葉がある。「竹内君、経営戦略は漠然とした願望ではなく、過去の積み重ねの延長線上にあるものだし、あるべきもの」だと。

経営戦略は、将来のなりたい姿、到達目標を描いて、そこに向かう為の変革シナリオではないのか。この経営学者の言葉の意味を理解するまでかなりの時間を要した。

転職を試みようとする候補者の方との面談でも今後の方向感の設定に戸惑いを感じられている方が多い。私は、単なる経歴の棚卸ではなく、今までの経歴の本質や概念を考えることを促す。これにより、現状を単純に是認する保守的な考えではなく、過去の時間の積み重ねの意味を深く考え、整理することによって、連続性のあるひとり一人にとって特異で且つ重厚な価値の存在にたどり着く。

働き手である私たちは、これを原点として、自らのキャリアの価値の最も適切な買い手の探索作業を惜しみなく苦労し、買い手の困りごとにあった仕様に微修正する。このプロセスは限りなく積極的な自己肯定の延長線上にある。キャリアデザインと経営戦略の策定プロセスは、同じ道程を踏まえるべきだと考えるようになったきっかけだった。

同様に経営者にとっても自社の会社の成長の中核となる人材の育成は、自らの会社の経営戦略や大切にしてきた企業風土と価値観を自分自身と同じように積極的に肯定的に感じ、行動する人材の到来を望む。さもなければ企業としての連続性が失われる。ただ、単純な言語を超える過去の経営の積み重ねを丁寧に伝え、将来を切り開く人材育成につなげるプロセスには時間がかかる。大切なことは、小規模でもできるだけ早く着手することである。そして、次世代の人材との交流の過程で経営者自身も深く考える機会を与えられる。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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