目白からの便り

深圳で気づいたこと、垂直統合と水平分業の背景にある職能給と職務給

ホテルの窓から広がる深圳の高層ビル群をガラスに朝の光が反射している。深圳と日本は時差が1時間ある。

30年ほど前、入社して2年目の時に初めて海外出張の機会を得た。香港から中国に移動したことを鮮明に覚えている。中国へ返還前の英国統治の香港からバスで中国に入る。くたびれた年代物のバスに揺られて越境する。天安門事件から数年後のことであり、中国国内に入ると道路のいたるところに銃を持った人民解放軍の兵士が立っていた。その後何度か深圳を訪れたが、今回は深圳市内では、ニュースで映し出されるスポーツスタジアムに集結した武装警察の車両が木々の間から映し出される風景を見る。

深圳は、中国でも4番目の人口を誇る1,300万人を超える巨大都市に発展している。工業化も急激に進み、近代的な建物がいくつも空を目指す。今も建築スピードは衰えないといる。

成長力が高い中国企業の多くの企業形態(価値創造プロセス)は、広大な経済ネットワークの中の組合せによる水平分業である。そして、雇用体系の中軸である賃金システムは、「職務給」である。
日本の価値創造プロセスが、技術・技能の積み重ねを大切にする垂直統合型とはスタイルが異なる。その日本企業の雇用・賃金システムの骨格は、長期の知識・技能・経験形成と多能工化を支える「職能給」に支えられている。雇用システムと企業形態との連動性は今まであまり意識してこなかったが、人事屋として大切な視点であることを再認識した。

企業の市場での戦い方によって、育成方法が異なるのは合理的である。水平統合型の企業形態は、その機動性の高さから環境変化に機敏に反応できる展開スピードの速さに利点がある。その一方で、品質や安全といった価値連鎖の動脈形成に見劣りが生じる。一方で日本企業の伝統芸能である垂直統合型は重厚な機能蓄積により、動きの緩慢さにジレンマは生じるもののその逆の立場を堅持する。もちろん、これから直面する日本における雇用環境の少子高齢化と雇用形態の多様化、多国籍化にどのように対処するかという難問の方程式も同時に解かなければならない。

企業における人事や賃金制度の見直しの場面に立ち会うことが多くなった。人事トレンドに惑わされることなく、それぞれの企業の事業戦略と競争優位性の今と未来の源泉を思慮深く観察しながら、最適な形態を現実的な変革シナリオを意識しながら再設計したい。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

深圳にて 竹内上人

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