目白からの便り

コミュニケーション力について

今朝の都内は、穏やかな日差しが差し込んできている。昨夜遅くに雪交じりの雨が降っていたので心配だが、杞憂に終わった。松本の自宅に電話すると雪が3センチほど積雪があるようだ。

今週は企業研修のプログラムの打ち合わせをする機会がいくつかあり、グローバルコミュニケーションで必要な要件は何かということについて考える機会があった。グローバルという冠がついているので、そこには言語(端的には語学力であり、英語の力量を指す)の問題と、多様性(Diversity)を受け入れる能力が思いつくのだが、コミュニケーションを担う力という観点で考えてみると、そんなに問題は簡単ではない。

私は、コミュニケーションが成立するには、3つの要素があると思う。1つ目は、「伝える力」である。これは件の企業研修のプログラム設計において、海外にある販売・製造現地法人とのビジネス上のコミュニケーションや、ガバナンスを行う上で「英語力」が日本の企業人には決定的に欠けているという切実な危機意識からくる。反対に、留学生や、外国籍社員に対して日本企業が期待する「日本語力」も同様である。
そして、こうした語学力をベースにし、分かりやすく構造化された言語情報を適切な場面で適切なルートを通じ、適切な方法で伝達するという「伝える力」である。

2つめは、相対する人間関係における「感受性」である。相手から発信される微細な心情情報を受信、解析し、自己の感情を最適な状態にマネジメントする能力である。相手の心の変化を瞬時に且つ的確に読み取り、自己の心情をコントロールし、適切に対応させることができる感情のマネジメント力である。こちらは幾度か大学での講座の内容を通じてご紹介しているEQ (Emotional Intelligence Quotient:こころの知能指数)の卓越性に裏付けられる。適切に取り入れ活用すると「感情の優れた使い手」になることによる組織関係性の良質化につながる。

3つめは、外交的関係性(Diplomatic Relationship)を理解し構築する能力である。相手にとって自分が有益な存在になるような関係性を演出する能力である。自国の首相も苦戦しているのであろう。3つのコミュニケーション能力の中で最も難易度が高い。①相手の困りごと、立場を理解し、同じ視点で考えること、②相手の期待値に適合する価値を提供できる要素を自己の保有能力や関係資本(人脈・ネットワーク)から抽出し提供すること、などである。前職で次世代リーダー育成のプログラム担当をしていた時に一橋の組織論の先生が「ディプロマシー:Diplomacy」というボードゲーム(第一次世界大戦前の緊張した関係にあるヨーロッパを舞台にした覇権を巡って争うボードゲーム)をプログラムに取り入れていた意図もそこにあると理解する。

1つ目が「言葉という情報伝達力」、2つ目が、それを包む「感情能力」、3つ目が共感・共鳴する「関係性構築能力」、どれも等しくコミュニケーションが成立するには大切な技術である。難しいテーマだが、技術である以上能力開発が可能でもある。

今日一日が良い一日となりますように、困難に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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