目白からの便り

独りになること

みなさま

寒い日が続いています。東北地方では大雪とのこと。今朝は都内で朝を迎える。
今週の初めの成人の日、私はこの成人の日に掲載される伊集院静さんが執筆しているサントリーの企業広告を毎年楽しみにしている。かつては山口瞳さんであった。

今年のメッセージは、「独りで旅に出なさい」と記されていた。
私が特に心を奪われたの箇所は、「…私の提案は、旅だ。それも若い時に独りで旅に出ることだ。日本でも、海外でも構わない。1番安いチケットを買いなさい。金がなければ、君の足で歩き出せ。自分の足で見知らぬ土地を歩き、自分の目で、手で、肌で世界に触れることだ。…」
『金がなければ、君の足で歩き出せ。』と言うフレーズは、現在の自分自身に対しても自戒をこめて強烈に迫ってくる。

キャリアを考える時に人間の成長はその環境に大きく依存する。自分に創造的な変化を要求する環境に身を置くことは、自己成長や鍛錬の場を与えてくれる。人間的な成長や感受性の高まりもそこから得られる。
ただ、その機会をどうやって連続的に獲得していくことができるかということが難題でもある。

組織集団の中に埋没していくと時々自己を喪失し、他の影響の中だけで時間を積み重ねていくことがある。それはある意味居心地が良いのだが、成長のための機会を他人に委ねてしまうことになる。

大学の受験で悶々とした日々を過ごしていた時、当時京都大学の教鞭をしていた森毅先生のエッセイが今でも心の中に沈殿している。そこにはこう書かれてあった。「京都三条大橋の近くに1匹の老犬がいる。老犬は悠然と通りを横断する。車の往来をまるで全く気にしていないかのようにゆったりと。おそらく彼は鋭敏な神経を研ぎ澄まして周囲に気を配っているのだろう。そんな不安をその姿から感じ取る事をさせず悠然と歩いている。独りで渡ることは集団で渡るよりも安全なのだ。」表題も「独りで渡れ」だった。

私たちは大人になっても、どんなに歳を重ねても、順境な時も、逆境の時も自分のキャリアの選択を自らの責任で行い、そこから何を学び、何を感じ取るかを自分自身の心で捉えていく前向きな努力を時々は試みたほうが良いと思う。その時、時には独りになった方がいい。

今日一日が良い一日となりますように、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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