目白からの便り

スプリングドライブの夢を読んで 自らのキャリアの聖地を偲ぶ

手元に1冊の書籍が届いた。前職で大変お世話になった方からの本である。淡いクリーム色の表紙には「スプリングドライブの夢 赤羽好和さんの思い出」と記されている。

私の職業生活のスタートは、長野県の塩尻市にある腕時計の工場からだった。もともとコンピューターのことがやりたくて入社した会社だったのだが、配属された部門は、腕時計の工場の人事部門であった。
今振り返ってみると、自分の仕事のスタートが、この腕時計の工場であったことが計り知れない私の人生の価値を育むことになった。

皆さんはスプリングドライブウオッチと言うものを知っているだろうか。日本語で、言い換えると「機械式水晶腕時計」のことである。日本語で、言い換えても何のことやらと思われる方が多いかもしれないが、メカ時計でありながら、電池などの電源供給を受けずに、人間の日常的な行動によって独立して機械式に発電し、そのエネルギーを使ってクオーツを機能させると言う精密機械であるで。まさに多分に、からくり的な要素を秘めたマイクロエレクトロニクスの結晶のようなものである。このスプリングドライブは、長野県の「信州 時の匠工房」で製造されている。そして、この事業所は私が社会人としての第一歩を歩んだ思い出の場所でもある。

書籍には、技術的なハードルはとても高く、自動車産業で言うと、このハイブリット自動車の時計版のような構造といってもいいだろう。この独立幻想的なエネルギー供給権を持った精密なメカ機能を確立する技術は、相当な水準が求められた。この技術は、1977年に構想され、1998年4月のスイスで開かれたバーゼルフェアで技術発表をされ、大きな反響を巻き起こした。

手にした書籍は、この開発の構想段階から実現に至って尽力をされた表題の赤羽さん功績を偲んで、その上司にあたる役員の方が万感の思いを込めて描ききった物語である。私も大変お世話になった職業上の恩師でもある。文章を読み進めていくうちに、文字に刻まれた人々の名前は全て懐かしい人たちであり、自分の職業人生、キャリア形成において、大きな影響を与えてくれた人たちばかりである。かなり昔の話なのだがタイムワープしたように、その時代の自分に立ち戻ることができる。

キャリアの原点を考えるときに、最も自分自身が啓蒙された時期のことを思い返してみる事はとても有意義なことである。その当時何を感じて何に感動し、どのような言葉に影響受け、仕事に向き合ったのかを考える事は今の仕事の立ち位置を振り返るだけでなく、どんな年齢でもこれから先の仕事との向き合い方を軌道修正し、強固にしてくれる。

この書籍を送っていただいた当時、役員だった方には心から感謝申し上げたい。部下のことを心から敬意をもちながら回想された一文字一文字に重厚な思いと愛情の深さを感じるばかりである。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2024年8月23日  竹内上人

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