「駅伝」という陸上競技に馴染みがある方も多いと思う。幾人かのメンバーで長い距離を一本のタスキを繋いでいく集団競技である。個人の記録も競い合う対象かもしれないが、圧倒的にチームとしての完成度に私たちの関心は向けられる。昨夜、その駅伝について、若い時期に私にとっては想像を超える熱量と時間を積み重ねた方々とお食事をしながらお話をする機会があった。私も中学時代に陸上競技に親しんだこともあり、長距離を走るということについて心を刺激される時間であったが、やはり実際に駅伝に深く関わった方々との会話は、私にとって価値ある機会であった。自宅に戻り、一息ついたところで駅伝に関わる記憶が鮮明に蘇る。私自身は競技としての駅伝の経験はないが、多くの方々と同様に年の初めの正月三が日の日常の風景が駅伝という競技と密接に重なり合う時間であったことを想い返す。
幼少期のお正月の過ごし方として、元日は実業団によるニューイヤー駅伝、２日から３日は箱根駅伝と正月三が日は、午前中からお昼過ぎまで実家の居間では毎年テレビ中継が流れていた。その風景は今でも毎年繰り返される。亡くなった父親自身が実業団で駅伝に出場していたこともあり、実家では毎年繰り返される風景であった。テレビで映し出される実業団の駅伝、大学対抗の箱根駅伝の映像を見ながら、正月休みで弛緩している身体に鋭く鼓舞され共感するメッセージが送られる。選手ひとり一人が、絶え間ない仲間との切磋琢磨を通じた日常を過ごしながら、自身を練達し続けてきたことを想像するからこそ心を動かされるのであろう。
数年前からBusiness Athlete （ビジネスアスリート） 「職業競技者」という概念を考え続けている。人事を長く担い、人事評価の仕組みの中で、働く人たちが良い評価をもらったり、昇進や昇格をしたりする場面に立ち合い、意向に沿わない人事に辛酸を味わいながら受け入れていく場面に多く立ち会った。その一瞬一瞬に喜んだり悲しんだり、悔しい思いを感じてきたことであろう。もちろん自分自身も企業にいる時はその渦中にあった。 私は、大学時代も労使関係という学問を通じ賃金を勉強していた。ある時指導教官が人事の世界の中にもスポーツの世界と同様に、「爽やかなスポーツの精神」があってしかるべきだと熱心に話されたことを今でも鮮明に覚えている。
毎年、駅伝競走の中継を観ながらその思いはいっそう深まる。陸上競技、特に長距離走を目指す大学生や社会人にとって、ニューイヤー駅伝や箱根駅伝は大きな舞台である。この日に向けて練習を積み重ねる。そこには強固なトレーニングだけではなく精神的な練達や身体的な鍛錬が求められる。それと同時に集団としての凝縮性が堅牢になり、チームメイト間の「切磋琢磨による健全な競い合い」や「友愛に満ちた相互の励ましと援助」によりチームとしての純度が高まる。試合に向けて普段から仲間を気遣い、自らを律し、自己鍛錬し、次の学年、次の世代への継承（技術や知見）に心を配る。チーム全員が時空を超えて全員戦力化されるのである（2022,守島）。その姿に卓越した企業人・組織人としての職業意識が重なる。きっと、アスリートとしてのゴールを切った瞬間から、新しい挑戦のスタートが始まるのであろう。昨夜夕食を共にした彼らのこれからの想いに耳を傾けながら、その情熱は今も健在であり加速している。
「職業」という競技において自身の目標を設定し、それに向けて日々、練達をし続けること。仲間と共に切磋琢磨をすること。優れた職業倫理観を厳しい局面におかれた時でも堅持すること。職業上のルールの中でスポーツ競技と同じような「結果」を受け取ることになるが、どのような評価結果でも肯定的に捉え、次の試合へ向けて再び前に向かって進んでいく爽やかな精神さえあれば職業人生も楽しい世界に変容する。こうした経験から鍛えられる人間の胆力は、アスリートの世界もビジネスの世界も共通の将来に向けてのキャリアの底力となる。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
２０２５年６月２７日
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