目白からの便り

評価の仕組みをいかに設計するべきか

今週は、大学の秋季課程の学生の成績評価をつけるのにあれこれ悩みながらの一週間であった。当初定めた大学のシラバスという私の授業計画書では、㈰出席率25%、㈪授業の参画度25%、㈫プレゼンテーション25%、㈬試験25%という構成で成績をつけることにしている。

授業の構成でグループワーク(演習)を組み込んでいるので㈪の「授業での参画度」を組み込んでいる。どのようにグループワークに積極的にかかわったのか、まとめ上げる時に傍観者にならずに協力的なスタンスを維持し続けることができたか、結果を急ぐあまりに乱暴なまとめ方をしていなかったかなどという観点で観察する。民間企業の人事評価でいうところの「組織の一員としての貢献評価」である。

日本の人事評価制度の伝統的な評価軸は、能力、業績、勤務態度・意欲を客観的に数値化して評価する。そして、それらの数値データを、昇給や賞与、昇進・昇格に反映させる。人を評価する仕組みを様々に分解し、それぞれの役割に応じてその評価の比重を変えていく。職位階層が高いと成果に重点が置かれ、反対に、経験が低く職位階層が低い層には、態度や能力評価のウエイトを高くする。また、賃金の仕組みであれば、「役割評価」という職責をかなり細かく定義・市場価格と整合をとり「役割」をベースに評価することへの試行が企業の人事担当者の新たな目標になりつつある。

ここ数年の人事の取り組みではMBO(Management By Objectives) といわれる目標管理に基づき結果成果に着眼した評価システムの運用上の改善や、MBOが有する達成可能な目標水準設定という保守的な空気を打破し、チャレンジングな目標の設定と、相対的な結果評価を行うOKR(Objectives and Key Results)といわれる目標と主要な結果を評価の指標とする仕組みの導入が進む。

そして、企業の実務担当者は、組織が、個人毎に個別化・分断化され過ぎないように行き過ぎた個人評価を基軸としたシステムの比重を修正し、チームや組織といった集団としての貢献を評価システムの中にいかに合理的に、また納得性をもたせながら取り組むかという難題に向き合っている。当たり前のことに思える企業の目標をチーム・組織の目標に展開し、すべての個々の社員が会社全体の目標に主体的に向き合っていくように仕向けるしくみをどのように設計し、人々の公正性の合意を得るのかというテーマは難易度が高いのである。

企業のブランドは最終的には「私」を超え、「組織という公(おおやけ)」のために上司が見ていないところでも職業倫理に基づき勤勉に働く、良質な人の集団が存在するか否かである。小売りの現場においても、良質なお客様は、働く仲間同士が協力し合う友愛のある職場の空気と、販売員の心根の透明性を見抜くものである。経営者や人事の実務家はそうした、たたずまいのある組織の実現に真剣に向き合う必要がある。

組織が「働く人」を評価する意味をよく考えてみたい。「評価」は、公平に、適正に賃金を配分するということが基本ではあるが、別の側面は、「働く人」を勇気づけ、仕事に対するモチベーションを促し、組織の一員としての共同性を意識させながら、前を向いてもらうように支援していくというメッセージを伝える貴重な伝達手段でもある。その意味で評価システムは、コミュニケーションメディアの価値をもつ。大学の成績も企業の評価も人を評価し、成績の序列づけや処遇をすることだけが目的にならないように心がけ、どの様に組織や人を育てていくかという大切なテーマに対峙することが求められる。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2024年2月9日  竹内上人

 

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