先週の日曜日に親しい方と長野県松本市を本拠地にしているサッカーチームの試合を観戦する機会を得た。かつてはJ1のクラスに所属していたが、現在はJ3で格闘し、J2昇格を目指しているチームである。日曜日の試合は、同じ長野県にあるもう一つのプロサッカーチームとの試合だった。同じ長野県内同士の対抗戦となり、「信州ダービー」と呼称され、普段以上に双方の応援にも熱がこもる。
私が特に興味を持つのは、この松本を本拠に置くJ3のチームの観客動員数の多さである。サッカーの上のクラスであるJ2を含めても観客動員数はトップクラスを誇っている。勝率やサッカー本来の順位的には苦戦しているのになぜ、継続的にこれほど多くの観客を吸引することができるのであるかという点である。松本という地域的な特性もあるかもしれない。ただそれ以上に、人事屋として組織マネジメント観点から考察すると、実際の企業経営や組織運営でも参考になるメカニズムが有るのではないかと思う。
組織・集団・コミュニティーの良質性にとって大切な概念として、「集団凝集性」(Group Cohesiveness)という概念がある。これは、企業などの集団において集団そのものがそのメンバーを引きつけ、その集団への帰属を動機づける度合いを示す。集団凝集性が高い企業では、社員の「今の会社に所属し続けたい」という思いが強くなり、離職率の低下や採用力の向上、組織への高い献身的な貢献などの組織生産性の向上に影響を与える要素でもある。集団凝縮性を高める視点をこのサッカーチームに当てはめて考えてみた。整理をすると5つほどの視点で、このサッカーチームは意図的か、結果的は判断できないが、巧みに良い機能を組み込んでいるように思う。
1.所有性(特定の企業が株主ではなく、市民やサポーターが所有感を持つことによる親近感)
2.所属性(既定の組織のみならず複数の組織に所属することへの安定性、特にシニア層など、現役世代からいったん退いた世代が再度組織に所属することによるアイデンティティの再獲得)
3.純粋性(応援時における過度な選手批判や相手チームを罵倒する言葉を使わない組織活動や構成員の誠実性や健全性、社会貢献性に対する信頼感)
4.競争性(信州ダービーのように近い関係性の中で集団間の競争を喚起するメカニズム)
5.成長性(所属選手が欧州のプロサッカーチームに移籍することによる視野の広がりや、その選手を通じての自己の成長の一体感)
どの様な組織も報酬制度という金銭的な組織吸引力も必要だが、集団そのものがもつ吸引力にも注目すべき点は多く有ると。冒頭の長野県内の対決は、松本に本拠を置くチームが後半残り5分のところで決勝ゴールを決め勝利した。私も一緒に観戦に行った友人と飛び上がってハイタッチをした。ホームグラウンドでのこの得点は、グランド全体、観客が一体となった凄まじいばかりの熱気に包まれる瞬間であった。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2023年10月20日 竹内上人